三太郎さん
レビュアー:
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秋にはビールが似合う。
僕は酒飲みではないが、好きなお酒を訊かれたらまずはビールかな。その次はウイスキーで決まりだ。
どちらも麦芽を原料としている兄弟みたいなお酒だ。今はクラフトビールがいろいろ飲める。ちょっと値段は高いが酔っぱらうことが目的ではないから問題ない。ところでビールにはエールとラガーの2種類があり、日本の大手ビールメーカーが造るのはラガー、それもピルスナーと呼ばれる1種類のみだ。でも世界には(今では日本にも)もっとたくさんの種類のビールがある。
エールとラガーは麦汁を発酵させる酵母の種類が異なる。それによって製法もできたビールの風味も違う。酵母の違いを発見したのはあのパスツールだった。
歴史的には中世からエールが欧州の特に英国とドイツで作られてきた。15世紀末に突如として新しい酵母が出現し、ドイツのバイエルンでラガービールが造られ始めた(当時はまだ酵母の存在は知られていなかったから、偶然ラガービールができちゃったのかな)。
エール酵母よりラガー酵母の方がより低温で働く。それでドイツで冬に貯蔵していたビールが偶然ラガー酵母により発酵したらしい。
そしてドイツを中心にラガーが広がっていき、ボヘミアで作られたのが黄金色のピルスナービールだ。ピルスナーは軟水で作られる(それで日本のメーカーは軒並みピルスナーなのかな)。
一方の英国では長らくエールビールが作られ続け、大量生産による「ポーター」ビールが飲まれるようになる。アイルランドでこれに対抗して作られたのがギネスビールだ。香りもアルコール度も高く「スタウト」ビールと呼ばれた。
18世紀の英国で作られたのが「IPA(インディア・ペール・エール)」だ。アルコール度が高く、ホップの使用量が多く、帆船でインドまで運んでも腐らないビールだった。今ではそのままでは苦くて飲めないのでマイルドになっているとか。
著者は一時ビールの醸造を手掛けていた。この本ではビールの製造工程が詳しく説明されている。
著者によると酵母の加熱殺菌をしない「生ビール」が評価されるのは日本だけらしい。実は加熱処理をしてもしなくてもビールの風味には違いがない。単に商品の差別化を図ったメーカーのイメージ戦略らしい。
後半では世界の様々なビールとビールの鑑定方法が紹介されている。
世界のビールはバラエティーに富んでいる。一方、ピルスナータイプ一本やりで、重箱の隅をつつくような微細な差別化でビールの世界を狭めている日本の大手メーカーには、税制の隙間を狙う安売り競争から脱する道はあるのかな。
実は僕は日本の大手メーカーのラガービールが好きという訳ではありません。ビールがいいなあと思たのはクラフトビールとして売られているエールを飲んでからです。ビールには香りとわずかな酸味と麦芽の甘味が少し残っているのが僕の理想で、クラフトビールのエールには僕好みのビールがある。
日本の大手メーカーのビールで選ぶならサントリーのビールかな。香りと酸味が残っている。スーパードライなんて何がよいのかさっぱり分からない。今の若者がビールを好まないというのは、味のしないドライなビールのせいだな、きっと。(20年前にニューヨークのラーメン屋さんで飲んだスーパードライは香りと甘みが残っていました。カナダ製だったからかな。)
高校生のころ、通学路にビール工場があって、毎朝そこを通るときに工場から甘い香りが漂ってきました。あれが僕の最初のビール体験だったのかな。
どちらも麦芽を原料としている兄弟みたいなお酒だ。今はクラフトビールがいろいろ飲める。ちょっと値段は高いが酔っぱらうことが目的ではないから問題ない。ところでビールにはエールとラガーの2種類があり、日本の大手ビールメーカーが造るのはラガー、それもピルスナーと呼ばれる1種類のみだ。でも世界には(今では日本にも)もっとたくさんの種類のビールがある。
エールとラガーは麦汁を発酵させる酵母の種類が異なる。それによって製法もできたビールの風味も違う。酵母の違いを発見したのはあのパスツールだった。
歴史的には中世からエールが欧州の特に英国とドイツで作られてきた。15世紀末に突如として新しい酵母が出現し、ドイツのバイエルンでラガービールが造られ始めた(当時はまだ酵母の存在は知られていなかったから、偶然ラガービールができちゃったのかな)。
エール酵母よりラガー酵母の方がより低温で働く。それでドイツで冬に貯蔵していたビールが偶然ラガー酵母により発酵したらしい。
そしてドイツを中心にラガーが広がっていき、ボヘミアで作られたのが黄金色のピルスナービールだ。ピルスナーは軟水で作られる(それで日本のメーカーは軒並みピルスナーなのかな)。
一方の英国では長らくエールビールが作られ続け、大量生産による「ポーター」ビールが飲まれるようになる。アイルランドでこれに対抗して作られたのがギネスビールだ。香りもアルコール度も高く「スタウト」ビールと呼ばれた。
18世紀の英国で作られたのが「IPA(インディア・ペール・エール)」だ。アルコール度が高く、ホップの使用量が多く、帆船でインドまで運んでも腐らないビールだった。今ではそのままでは苦くて飲めないのでマイルドになっているとか。
著者は一時ビールの醸造を手掛けていた。この本ではビールの製造工程が詳しく説明されている。
著者によると酵母の加熱殺菌をしない「生ビール」が評価されるのは日本だけらしい。実は加熱処理をしてもしなくてもビールの風味には違いがない。単に商品の差別化を図ったメーカーのイメージ戦略らしい。
後半では世界の様々なビールとビールの鑑定方法が紹介されている。
世界のビールはバラエティーに富んでいる。一方、ピルスナータイプ一本やりで、重箱の隅をつつくような微細な差別化でビールの世界を狭めている日本の大手メーカーには、税制の隙間を狙う安売り競争から脱する道はあるのかな。
実は僕は日本の大手メーカーのラガービールが好きという訳ではありません。ビールがいいなあと思たのはクラフトビールとして売られているエールを飲んでからです。ビールには香りとわずかな酸味と麦芽の甘味が少し残っているのが僕の理想で、クラフトビールのエールには僕好みのビールがある。
日本の大手メーカーのビールで選ぶならサントリーのビールかな。香りと酸味が残っている。スーパードライなんて何がよいのかさっぱり分からない。今の若者がビールを好まないというのは、味のしないドライなビールのせいだな、きっと。(20年前にニューヨークのラーメン屋さんで飲んだスーパードライは香りと甘みが残っていました。カナダ製だったからかな。)
高校生のころ、通学路にビール工場があって、毎朝そこを通るときに工場から甘い香りが漂ってきました。あれが僕の最初のビール体験だったのかな。
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1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
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- 出版社:講談社
- ページ数:0
- ISBN:9784065159521
- 発売日:2019年06月12日
- 価格:1100円
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