ぽんきちさん
レビュアー:
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ワニは口を閉じる力は強いけど、開ける力は大したことないと思っているそこのあなた! 本書必読!!
ワニ研究者によるワニ入門本。
日本では天然では見られないワニ。
著者は子供の頃、ワニのテレビ番組に魅せられて、ワニ研究が盛んなオーストラリアに渡る。苦労の果てに研究職に就き、以来、「100年経ってもワニが生きていける」世界を目指して奮闘中である。
本書はそんなワニ研究者による、日本人読者向けのワニ入門書。
Q&A形式で親しみやすい作りだが、中身はかなりディープ。
ワニの種類に始まって、人食いワニ伝説の真偽やワニの体の秘密、生態や巨大ワニなど、ワニを巡るさまざまなトピックを易しく説く。
巷でよく言われるのが、ワニは口を閉じる力に比べて開ける力が弱いので、噛まれる前に、口を押えてしまえば大丈夫、というもの。
ワニの口の筋肉は閉じるために特化している。瞬間的に獲物をつかんで、水に引きずり込んで溺れさせるのがワニの常套手段なのだ。そのため、ワニの人身事故の死因はほとんどが溺死である。サメに襲われた場合はほとんどが失血死であるのとは対照的だ。溺れさせて動かなくして、後でゆっくり食べるわけだ。
瞬発的かつ強烈な閉じる力に比べれば、なるほど開ける力は弱い。が、それはあくまでも比較の問題。大きさ3メートル以上のワニであれば、ヒト1人の手の力で口を押えるのはまず無理ではないかというのが、著者の同僚たちの一致した意見。
だから、ワニに会っても口を押さえようなんて試してみてはいけない。おたおたしているうちに噛みつかれてしまうのが関の山だろう。
では、ワニに噛みつかれてしまったらどうすればよいのか。
著者がお勧めするのは、簡単な武器、つまり棒のようなものを持って歩くこと。ワニが何かに噛みついているときには、当然のことながら、他のものに噛みつくことはできない。ワニの鼻面を棒でばしん!と強く叩いてやれば、ワニは反撃しようと口を開けることがある。その隙に何とか逃げることができる(かもしれない)。
銃を持っていったらどうかと思う人も多いが、実はワニに噛まれて咄嗟に銃で正確に狙いを定められる人はそう多くないという。挙句、ワニじゃなくて噛まれている人の方にあたって、その銃創の方が咬傷よりひどかった、などという笑えない実話もある。
何より、鉄則はワニのいるようなところには1人ではいかないこと。同行者がいれば、噛みつかれてもすぐに気づいてもらえるし、知らないうちに水中に引きずり込まれて死亡する可能性も低い。
ワニは大まかに3科に分かれ、噛み合わせが微妙に異なったり、心臓が特殊な作りで長時間の潜水に適応していたり、帰巣本能があったり、と、ワニのトリビアも満載。
ワニ革を目的とした乱獲のため、第二次大戦後からワニは急速に減少し、70年代には絶滅が危ぶまれるほどになった。1975年以降、保護活動が本格化し、今では持ち直しつつある。以前なら見られた超大型個体が見られる日も遠くないかもしれない。
とはいえ、ワニが多くなれば家畜や人が襲われる事例が増えるのもまた事実。ワニが生き方を変えることは難しいわけで、ヒトの方が何とか共存の道を考えるべきと著者は模索を続けている。
よく見れば表紙の柄もワニ柄。ワニ愛にあふれた1冊である。
日本では天然では見られないワニ。
著者は子供の頃、ワニのテレビ番組に魅せられて、ワニ研究が盛んなオーストラリアに渡る。苦労の果てに研究職に就き、以来、「100年経ってもワニが生きていける」世界を目指して奮闘中である。
本書はそんなワニ研究者による、日本人読者向けのワニ入門書。
Q&A形式で親しみやすい作りだが、中身はかなりディープ。
ワニの種類に始まって、人食いワニ伝説の真偽やワニの体の秘密、生態や巨大ワニなど、ワニを巡るさまざまなトピックを易しく説く。
巷でよく言われるのが、ワニは口を閉じる力に比べて開ける力が弱いので、噛まれる前に、口を押えてしまえば大丈夫、というもの。
ワニの口の筋肉は閉じるために特化している。瞬間的に獲物をつかんで、水に引きずり込んで溺れさせるのがワニの常套手段なのだ。そのため、ワニの人身事故の死因はほとんどが溺死である。サメに襲われた場合はほとんどが失血死であるのとは対照的だ。溺れさせて動かなくして、後でゆっくり食べるわけだ。
瞬発的かつ強烈な閉じる力に比べれば、なるほど開ける力は弱い。が、それはあくまでも比較の問題。大きさ3メートル以上のワニであれば、ヒト1人の手の力で口を押えるのはまず無理ではないかというのが、著者の同僚たちの一致した意見。
だから、ワニに会っても口を押さえようなんて試してみてはいけない。おたおたしているうちに噛みつかれてしまうのが関の山だろう。
では、ワニに噛みつかれてしまったらどうすればよいのか。
著者がお勧めするのは、簡単な武器、つまり棒のようなものを持って歩くこと。ワニが何かに噛みついているときには、当然のことながら、他のものに噛みつくことはできない。ワニの鼻面を棒でばしん!と強く叩いてやれば、ワニは反撃しようと口を開けることがある。その隙に何とか逃げることができる(かもしれない)。
銃を持っていったらどうかと思う人も多いが、実はワニに噛まれて咄嗟に銃で正確に狙いを定められる人はそう多くないという。挙句、ワニじゃなくて噛まれている人の方にあたって、その銃創の方が咬傷よりひどかった、などという笑えない実話もある。
何より、鉄則はワニのいるようなところには1人ではいかないこと。同行者がいれば、噛みつかれてもすぐに気づいてもらえるし、知らないうちに水中に引きずり込まれて死亡する可能性も低い。
ワニは大まかに3科に分かれ、噛み合わせが微妙に異なったり、心臓が特殊な作りで長時間の潜水に適応していたり、帰巣本能があったり、と、ワニのトリビアも満載。
ワニ革を目的とした乱獲のため、第二次大戦後からワニは急速に減少し、70年代には絶滅が危ぶまれるほどになった。1975年以降、保護活動が本格化し、今では持ち直しつつある。以前なら見られた超大型個体が見られる日も遠くないかもしれない。
とはいえ、ワニが多くなれば家畜や人が襲われる事例が増えるのもまた事実。ワニが生き方を変えることは難しいわけで、ヒトの方が何とか共存の道を考えるべきと著者は模索を続けている。
よく見れば表紙の柄もワニ柄。ワニ愛にあふれた1冊である。
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
この書評へのコメント
- ぽんきち2021-10-29 08:23
今でもサメをワニという地方もあるみたいですよね(中国・山陰とか)。
一時期、twitterでこんな投稿が話題になりました。https://twitter.com/meta_pico/status/1396413279077945348
因幡の白兎が騙したのも「ワニ」。これは「サメ(ワニザメ)」とする説を支持する人が多いですが、実は本当にワニだったんじゃないかという人もいるようで、なかなか難しいですが。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E9%82%87
いや、私は単に間違えたんですけどwクリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 コメントするには、ログインしてください。
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