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スーヌさん
スーヌ
レビュアー:
ベトナム帰りの兄は本当に殺人マシーンになってしまったのか? 兄を信じて、弟の冒険の夏が始まる
 主人公のギビーは高校生、時代は70年代でベトナム戦争は進行中。
 従軍していたギビーの兄ジェイソンが帰還してきます。
 ですがジェイソンは不名誉除隊で薬物中毒で刑務所あがりで犯罪組織とも関係があると噂されていて、迎える家族は戦々恐々としています。
 ジェイソンは実家には寄り付かず、バイカーがたむろす物騒な一角に居を決めます。
 両親はジェイソンに会うなとギビーに言いますが、ジェイソンは彼を訪ねてきます。
 会ってみればジェイソンは、弟思いの優しいお兄ちゃんで、確かに戦争帰りらしい虚無的な雰囲気を漂わせてはいますが、そんな凶暴なジャンキーにはとても見えないのでした。
 そしてちょっとオクテのギビーのために、女の子を用意してダブルデートまで設定してくれるジェイソン。
 しかしここでジェイソンと付き合ってると思われた女性が惨殺死体で発見されて事態は急変します。
 もう関係者は全員ジェイソンが犯人だと思い込んでいます。
 しかしギビーだけはジェイソンの無実を信じて独自の調査を開始します。
 とはいえギビーは素直ないい子だけど探偵の才能には恵まれていません。
 そこは親友のチャンスが担当。さらに付き合いだしたばかりの学校一の美少女もくっついてきて少年探偵団は手探りで捜査に取り掛かるのでした。
 ちょっと待ったこの本夏休みの課題図書じゃないよね?
 少年グループが無実のお兄ちゃんのために探偵ごっこか?
 でもここが本書最大の魅力で、美女の惨殺死体とか想像を絶する変態とか刑務所の地下組織とか、恐ろしい裏の世界がドロドロと日常を侵食していく一方で、育ちのいいおっとりした少年と、そんな少年の相棒に相応しい、頭の回転は極めて速いがちょっと滑稽な親友との友情、そして美しく聡明な少女とのドラマチックな初恋が同時進行で描かれる稀有な作品なのです。
 こういうハードな設定の作品は設定そのままにハードな展開で読んでて気が滅入ったり読後感最悪だったりすることも多いのですが、本書はそう言うことなし。
 少年ギビーがお兄ちゃんの足跡を追いながら成長して男になっていく、そんなひと夏の冒険が、極めて凶暴な横顔を見せている。そんな作品です。
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スーヌ
スーヌ さん本が好き!1級(書評数:33 件)

50代男性 実は書店員だが業務で書評を書く機会はない。

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