鎌倉時代に入って、京都に指導力のある帝を置きながら、鎌倉で政治を行う形がますます混乱して判りづらかった。
もちろん全国に散らばっている武士の権力体勢は頼朝の時代で一応形を成したが、それでも政治機構はまだまだ完成してなかった。
平氏が政権を握っていたとはいえ政治の中枢権力を担っているのが武士だけではない複雑な形だった。
前置きはいいとして
実朝の歌を読んでみよう(唐突に、秋なので?あの海の歌を思い出したので)と思ったら、そうだ雪の朝、鶴岡八幡宮で甥の公暁に斬り付けられ亡くなってしまうのだ。まだ27歳だったのに。
「修善寺物語」という名人気質で面つくりの夜叉王が主人公の古い映画を思い出した。
その後岡本綺堂のあっさりした戯曲も読んでみたのだが、二代将軍の頼家が修善寺に流されて、不意に(計画的に)襲われてなぶり殺しに近い残虐な殺され方をする映画だった。
頼家最後の湯殿のシーンは映画の方だけにある。
その後を継いだ実朝が、若かったこともあり政治に深入りしたくなかったとしても納得できる。
ただこの悲劇の人も、将軍職を継ぐまでは、幼い頃から平穏な男の子として可愛がられていたらしい。
思えばもともと兄は少しタガが外れていて周りの顰蹙を買っていた、殺害された後もこんな時代仕方がないが、周りが何とかするだろう、実兄は将軍だったのだから。などとと思っていたのか。
ところが将軍職が舞い込んできた。それからも京に憧れ後鳥羽上皇を慕い、歌を読み、すすめられた御台所は武士の娘を断り京から貰った。歌もたしなむ娘だった。
穏やかに歌に打ち込む日々が続いていた。
「金槐和歌集」を読んでみたが、悲劇が頭から外れず、明るい四季の歌までなにか哀調を帯びたようで読んでいてもちょっと暗いものになってしまった。
源氏の将軍は実朝で終わっている。
頼朝が実権を握り従兄の義仲や奥州にかくまわれていた弟義経までも討ち幕府を立てた。
政子の実家筋北条氏は実朝の後ろで執権職という幕府の権力を握り当時京に後鳥羽上皇置いて明治まで続く武家政治の基礎が完成した。
ということだがその時代の移り変わりは、家系の裏の血筋はまず名前が似ていてわかりづらい。
武士の親類縁者を束ねるつながりも複雑でむつかしい。
小競りあいから始まる大小の内乱。
地方で芽生えた武士の集団が実権を握るのは、長く続いてきた公家政権に対抗しなくてはならない。
公家に憧れかしずくという形から、公武の共存を目指した。
それでも、この時代から続く西へ西へと西を向いてきた武家政治は最後には源氏台頭の地、関東へと舞台は引き継がれていったのだから面白い。
この漫画は石ノ森章太郎筆で、文字も似たような名前ばかりでわかりづらい(しつこい;;)人物の判別や、戦いの様子など私のような想像で知っているような気になっていたところが。絵で見ると顔貌などが個性的で少し鮮明になってわかりやすかった。
実朝を少し詳しく知ろうと鎌倉幕府を読んでみたことから、思いがけず次は京都に多くのお寺を立てた足利氏ってどうして?という疑問が湧いた、これは次に読むつもりの九巻目、室町幕府の成立に繋がる。
大河ドラマは「炎立つ」と「太平記」しか見ていないけれど、なんだか面白面倒な南北朝も気になって吉川英治「太平記」でも読んでみようと思ったら大変、13巻もある。
味を占めてこのマンガシリーズがいいかな。
次は葉室麟作の「実朝の首」を読みかけているが、なんだか生々しくて、実朝は最初のところで亡くなっていてその後の話だけれど、読む気になったのを後悔しながら何度も挑戦、時代などの知識で脇を固めて今度こそ読了したい。
崩れそうな積み本山脈はどうする。
悩める秋、唐突に思う、緊急事態宣言も一応解除されたのだし。旅の空の明るさもいいな。
実朝さんのように割れて砕けてさけて散る波でも見てみたいな、近場和歌山で。




徹夜してでも読みたいという本に出会えるように、網を広げています。
たくさんのいい本に出合えますよう。
この書評へのコメント
- ゆうちゃん2021-10-17 11:47
「炎立つ」、「太平記」をご覧になったのですね。さすがお目が高い!僕は毎年惰性で見ていますが、戦国と幕末の繰り返しでもう飽きました。このふたつは、取り上げた時代も描き方も出色です。特に太平記は秋に入って駆け足で物語が流れてしまったので1年半か2年続けて欲しかったくらいです。
御覧にならない大河ドラマを取り上げて恐縮ですが、1980年代に「草燃ゆる」と言う大河ドラマが放送されていました。主人公は北条政子です。そのドラマの実朝像はちょっとお書きなられたものと違いました。実朝が京から妻を迎えたのも、兄頼家が御家人の比企氏の妻を娶り、北条と比企の対立を招いたのを見ていたので自分も同じ目に遭いたくないと言う理由からだとされていました。大船を作って中国に行こうとしたり、和歌にのめり込んだのも自分の地位の危うさを良く知っていたから、とされています。雪の八幡宮での惨殺の場面は可哀そうで仕方ありませんでした。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - ことなみ2021-10-17 13:07
大河ドラマはNHKでも選択が難しいでしょうね。集まりで朝ドラと大河を見ていないのは私だけでした。評判のいい物はDVDで一挙に見ようかなと思っています。
実朝の実像は文献などから推測するしかありませんが、歌は四季の歌より「雑」詠が個性的で勢いがあるように思っていました。出発が本歌取りから入っているせいかほとんど有名な既成の歌によく似たもので、これは若い頃の習作かなと思っていました。
短命の上生き甲斐の感じられない生涯のようです。源氏正統の子でしたが、平家を滅ぼし安徳亭を鎮め、兄の詩に片は悲惨極まりなく、寄る辺を帝や定家に求めるとすれば歌つくりの道が支えだったのかもしれませんね。それでも京都の集まりからは遠く、しがらみから解放されようとしても「唐船」は浮かばないで朽ち果ててしまいました。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - ことなみ2021-10-17 13:10
そうですね、頼家の殺し方は残虐だったそうで、虎視眈々と狙っている人たちには逆らわない生き方を選んだようですね。生きづらい中でひと筋に頼った帝に近い姫をもらったのか逃げたのか、それでも、次第に睦みあっていたようですから。子もなく、裏では比企氏と北條氏の確執母の強権。一度は訴訟の決済で賛同を得ていたので政治力もなくはなかったようですが。、これも合議制になってしまいましたね。
死の予感があっても逃げることもできず、右大臣の官位と共に散る覚悟もあったのかと。
兄の無惨な死は実朝の無常観の元だったかもしれないです。
戦国時代は生と死を前にして物語りが生まれていますね。大河ドラマも戦国寄りが安心かも。
実朝のことを少し知ったので、公暁の襲撃から始まる「実朝の首」はまた休んでしまっています。公暁も陥れられ殺されるのですから、実朝も安全圏で模索しながら生きるのは苦しかったでしょう。
「草燃ゆる」機会があれば一挙に(^▽^)/クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - ゆうちゃん2021-10-17 14:59
はい、NHKの心情?も理解出来ます。知らない時代を取り上げれば視聴率が落ちますし、知っている時代ばかりだとマンネリ化します。朝ドラは小学生時代以来、見たことがないですが、似たようなものかもしれません。実際、「炎立つ」もその後の「花の乱」(応仁の乱)もあまり視聴率は取れませんでした。
実朝の無常観、大いに共感です。公暁もまた、実朝を取り巻く環境の犠牲になりました。「草燃ゆる」では公暁を見殺しにする三浦義村を仮面ライダーの俳優藤岡弘が怪演していました。
「実朝の首」、どうかご負担になりませんように。気長に書評を楽しみにしております。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - ことなみ2021-10-17 17:57
骨太の義村ですね、大河ドラマはイメージもですが演技力ですね。
望むなら、流行り俳優総出で特撮使い放題(中国ドラマ並みの)八犬伝とか。
光源氏が脇役のお局が主の源氏物語。動き回る西行(地味なので^^)、
今読みかけ(ばっかり;;)の「荒法師運慶」。子供時代もかわいらしい「阿修羅」とか。要は脚本で引っぱりつつ仏師などはカメラワークとライトで。(でも地味かも)
歴史の舞台が西ばかりだと面白くないですね。全国区で、何度目かの義経(^▽^)
アテルイは古すぎでしょうか、古代だし。
気合いが入った落語の舞台や有名どころ総出の志ん生さん一代記。
なんて私には面白そうですが、視聴者の中には研究家並みの造詣の深い人も多いでしょうから、エンタメ寄りのこんな話はここだけです。企画も難しいでしょうね。あまり見もしないで口ばかりです。
またミステリの秋になりました。読むより積むのが多いですが楽しみです。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
コメントするには、ログインしてください。
- 出版社:中央公論新社
- ページ数:0
- ISBN:9784122069503
- 発売日:2021年01月20日
- 価格:924円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。




















