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三太郎さん
三太郎
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カラス自身の声を使って、カラスをだますという話。
1979年生まれの塚原さんはカラスの鳴き声の研究で博士論文を書いたが、現在はアカデミズムの世界から実業の世界へ転身し、クロウラボというカラス問題への対策を提供するベンチャー企業の代表を務めている。

ここでいうカラスとは都市で大繁栄しているハシブトガラスのこと。彼らは元は森林で暮らしていたが、今では大都市の中心部へも進出して家庭や飲食店から出る生ごみを食べ散らかして問題になっている。

カラスは春の繁殖期には雌雄のペアで広範囲な縄張りを作って、高木や電柱などの上に巣を作るが、それ以外の時期には特定のねぐらに群れをなして集まり、鳴き声による騒音や糞害を引き起こしている。

これらの問題に対してカラスの鳴き声の研究成果を応用して、カラスを追い払ったり、より問題の少ないよその場所にねぐらを移動させたりする取り組みを事業化しようとしているとか。

カラスは通常はカーカーと鳴いて仲間同士で挨拶を交わしてるが、不審者を見つけるとカッカッカッカッと鳴いて威嚇し、さらに身の危険を感じるとギャーギャー鳴いて仲間に異常を知らせるという。

この異常を知らせる声を録音しておいて、センサー内臓の装置に仕込んでカラスが接近した時に声を発してカラスを追い払う装置を開発したとか。ゴミ置き場などに置くと効果があるという。

ただし、カラスをだまし続けるのはなかなか難しく、カラスが声に慣れてしまうと効果がなくなる。だから、カラスが接近した時だけに発声し、さらにそのカラスにだけ聞こえるような音量であることが肝心らしい。そうしないと普通の案山子のように最初はカラスを追い払う効果があっても、じきにカラスが慣れてしまう。

またカラスをねぐらから追い払う場合には、追い払っただけでは他のどこかにカラスが移動するだけなので、カーカーという仲間の声を別の場所で発して、追い払ったカラスの群れをより害の少ない別の場所へ誘導することにも成功したとか。

著者はカラスを銃で撃ったり罠で捕獲したりしてもカラスの害は減らせないという。例えば郊外の森に集まっているカラスを銃で撃つと危険を感じた周辺のカラス達まで銃が使えない市街地へ移動してしまうとか。

また罠でカラスを捕まえても、罠にかかるようなカラスはもともと弱い個体で餌が摂れずに危険と知りつつ罠に入ってしまうので、減るのは競争力のない弱い個体だけで、捕まえなくても自然に餓死するはずだった個体は減るが繁殖力のある元気なカラスには影響ないのだとか。

カラスの個体数を減らすには餌になるゴミの量を減らす(ゴミを食べられないようにする)ことが唯一の対策らしい。餌が減れば余剰なカラスは冬場に自然に餓死するのだとか。

カラスと人が相互に干渉せずに共存できる方法を模索するのが著者のテーマのようです。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:835 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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