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星落秋風五丈原
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殺し方にもほどがある そしてロマノフ朝終焉
 下巻はエカテリーナ2世の孫、アレクサンドル1世の死から始まる。順当に次男のコンスタンチンが皇位継承するはずだったが、頑なに固辞。貴賤結婚の条件として皇位継承を放棄する秘密文書を交わしていたためだ。しかし公開されていなかったため、弟ニコライはコンスタンチンの即位を宣言し、デカブリストの乱が起こり、最終的にニコライが即位、ニコライ1世となる。それにしても、気候がアレとはいえ、アレクサンドル1世もニコライ1世も病死である。鯨飲馬食、愛人はデフォルトと放縦な生活も影響したのだろう。ロマノフ朝の最期もアレクセイ皇太子の血友病が尾を引いており、病が滅びを招いたようなものだ。そうはいっても最後の皇太子の病気は母系からの遺伝であるため、本人の生活環境は原因ではない。

 最期の皇帝ニコライ二世は、訪日するなど日本と縁が深い。深すぎて日露戦争まで起こし、革命への流れを作る。そして何といってもロマノフ朝末期のどの歴史書にも登場するのが、怪僧ラスプーチンだ。彼が祈りを捧げると皇太子の発作が止まったことから、皇帝夫妻の絶大な信頼を得る。結果敵を増やし、最後を迎える前にも別の相手に刺されているが、生命力が強い。本書には銃弾を撃たれまくった写真が載っており、さすがに引く。毒を飲ませても死なず、銃を撃っても死なず、凍えるような川に落としてもしばらくは生きていたなど、最期の様子はまさに怪物のようだ。ただ、皇帝一家の暗殺においても、暗殺犯がなかなか一度で留めをさせていない。両親の死を前にし震える子供達を銃剣で突き刺したり、結果最も惨たらしい死を迎えさせているので、件のラスプーチン怪伝説は、彼の驚異的な生命力というより、殺そうとするロシア人達が、致命的に下手だったのではないか。

ロマノフ朝関連書籍
ペテルブルクの薔薇 ロマノフの血を継ぐ女帝エリザヴェータ
『ロマノフの徒花 ピョートル二世の妃エカチェリーナ』
『ロマノフ朝史 1613-1918(上)』
山田風太郎書籍
ラスプーチンが来た 山田風太郎明治小説全集 11
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2320 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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