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DBさん
DB
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先進医療と金の問題の話
医療ミステリーの第6弾、「無駄に男前」や「男の嘘は見抜けるけど女の嘘には騙される男」の異名をとる犬養刑事のシリーズです。
今回の話は代替医療をテーマにしていました。

プロローグではALSになってしまった働き盛りの男性の家族を描いている。
実際には還暦くらいからの発症が多いので、まだ子供が小さいうちに闘病がはじまるというのは珍しいがここで病名はあまり関係ない。
先進医療という名の治療費のために妻は水商売をするようになり、家も手放し、それでも夫は病気が進行していって帰らぬ人となる。
妻もまた心を病んでいたのか四十九日に後を追い、残された二人の幼い姉妹は別々の家に引き取られていった。

このプロローグがどう関係してくるのか、犬養の娘が入院している帝都大病院で娘と仲良くしていた少年が亡くなった。
同じ腎臓病を持つものとしての連帯感があったのか、少年の死に動揺する娘に付き添って犬養は告別式に参列する。
そこで少年の身体に痣があったこと、そして刑事らしい男が様子を見ていたこともあり事件の匂いを嗅ぎつけるのだった。
だが少年の検死結果は病死、全身についた痣も死因にはならないという。

それでも翌月に同じような痣を全身につけた中年女性の自殺があって、亡くなった二人が通っていた民間療法の組織に目を付けます。
漢方薬を染みこませた棒で全身をマッサージするという治療で、薬にはならなくても毒にもならないんじゃないかと思うが治療費が数百万といえばうさん臭さも極まりない。
その主宰と名乗る男が怪僧ラスプーチンに例えられています。
事件は二転三転していきますが、「違和感」という自分の勘を頼りに突き進んでいく犬養の清濁併せ呑むような人物像が興味深い。

しかし日本の医療を題材にしているだけに、「移植待ちで両親そろっているなら生体だろう」とか「ALSなら胃ろうや呼吸器具をつけるかどうかで自分の命の長さをある程度選べるのに父親は何を考えていたんだろう」とかの雑音が多くてストーリーに集中できない。
ラスプーチンを持ってくるのは面白かったけどね。
こんな詐欺まがいの治療を医療とは呼べないにしても、「健康にいい」といううたい文句でいろんな商品が売れていくのは事実だし。
先進療法を名乗る高額な治療法を試すしかない患者の切実さと医療の闇を描き出していた。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2034 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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