darklyさん
レビュアー:
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表面上は絵画ミステリーのようだが、そこに練りこまれた人間ドラマのほうが一筋縄ではいかない。
本書は映画監督の岩井俊二さんが書いた小説です。本屋でなんとなく見つけて、岩井さんは小説も書くのかと思い手に取りました。特に岩井監督の大ファンというわけではないものの「Love Letter」や「スワロウテイル」などいつまでも印象に残り続ける映画を創る人だと思っており、カルト的要素を持った監督と認識しております。
八千草花音は人間関係に嫌気がさし広告代理店を退職し、美術雑誌にトライアウトとして採用された。花音は採用の面接で前の職場の後輩が写真を撮って送ってきた一枚の絵、零という画家が描いた「零の晩夏」という作品に魅了されたことを熱く語った。彼女は絵を描くことが好きで高校時代は美術部の部長をしていた。ある日、雑誌の企画のため訪れた美術館で根津杜夫というギャラリーの社長と出会う。
花音は根津から仕事の依頼のメールをもらい、訪れたレストランで高校時代の後輩加瀬真純と再会した。花音は彼に高校時代油絵を教えたが、その彼が高校三年の時に描いた作品を見てその力量に圧倒された経験がある。
そして花音はまた根津絡みでネットで話題となっているナユタという覆面画家の取材を担当することになった。ナユタが描いたモデルは必ず死ぬという都市伝説のような噂がネットで流れているのだ。その作品は写真と見間違うかのように極めて写実的で、死をテーマにしたものがほとんどだ。解剖中の人体や臨終間際の人をモチーフにしており、さもそのような噂が流れそうな作品が多い。
極めつけは「花の街」と題された3点の絵画で、3人の女性が描かれているがその3人とも札幌のバス事故で亡くなった被害者だ。問題はこの作品の発表時期だ。この作品が展示されたのがこの事故の10日後という。絵画の常識としてこの写実的な作品3点を1週間程度で描くのは不可能であるという事実が死神伝説というこの噂にリアリティを与えているのだ。
花音はナユタ本人には取材できないという制約の中、再会した加瀬の協力も得ながらナユタの取材を進めていく。果たしてナユタの正体は?死神伝説の真実とは?そして本書のタイトルでもある「零の晩夏」が意味するものとは?
この小説のジャンルを一言でいうのはなかなか難しいと思います。オカルトめいた絵画ミステリーの色彩が前半を強力に牽引していきますが、ミステリーの部分については正直それほど本格的とは言えないものであり、主題はやはり人間ドラマであり、恋愛ドラマであるように思います。
プロットに既視感を覚え、なんとか思い出したのがはるか数十年前に読んだ「堕ちる天使」。ミッキーローク主演で「エンゼル・ハート」として映画化されたオカルト小説と構造がとても似ていると感じました。ネタバレっぽい感じになるのでどこが似ているかは割愛します。
この小説も映画化されるのでしょうか?岩井監督の作品ですからきっと妖しくそして美しい映像の作品になるのではないかと思います。
八千草花音は人間関係に嫌気がさし広告代理店を退職し、美術雑誌にトライアウトとして採用された。花音は採用の面接で前の職場の後輩が写真を撮って送ってきた一枚の絵、零という画家が描いた「零の晩夏」という作品に魅了されたことを熱く語った。彼女は絵を描くことが好きで高校時代は美術部の部長をしていた。ある日、雑誌の企画のため訪れた美術館で根津杜夫というギャラリーの社長と出会う。
花音は根津から仕事の依頼のメールをもらい、訪れたレストランで高校時代の後輩加瀬真純と再会した。花音は彼に高校時代油絵を教えたが、その彼が高校三年の時に描いた作品を見てその力量に圧倒された経験がある。
そして花音はまた根津絡みでネットで話題となっているナユタという覆面画家の取材を担当することになった。ナユタが描いたモデルは必ず死ぬという都市伝説のような噂がネットで流れているのだ。その作品は写真と見間違うかのように極めて写実的で、死をテーマにしたものがほとんどだ。解剖中の人体や臨終間際の人をモチーフにしており、さもそのような噂が流れそうな作品が多い。
極めつけは「花の街」と題された3点の絵画で、3人の女性が描かれているがその3人とも札幌のバス事故で亡くなった被害者だ。問題はこの作品の発表時期だ。この作品が展示されたのがこの事故の10日後という。絵画の常識としてこの写実的な作品3点を1週間程度で描くのは不可能であるという事実が死神伝説というこの噂にリアリティを与えているのだ。
花音はナユタ本人には取材できないという制約の中、再会した加瀬の協力も得ながらナユタの取材を進めていく。果たしてナユタの正体は?死神伝説の真実とは?そして本書のタイトルでもある「零の晩夏」が意味するものとは?
この小説のジャンルを一言でいうのはなかなか難しいと思います。オカルトめいた絵画ミステリーの色彩が前半を強力に牽引していきますが、ミステリーの部分については正直それほど本格的とは言えないものであり、主題はやはり人間ドラマであり、恋愛ドラマであるように思います。
プロットに既視感を覚え、なんとか思い出したのがはるか数十年前に読んだ「堕ちる天使」。ミッキーローク主演で「エンゼル・ハート」として映画化されたオカルト小説と構造がとても似ていると感じました。ネタバレっぽい感じになるのでどこが似ているかは割愛します。
この小説も映画化されるのでしょうか?岩井監督の作品ですからきっと妖しくそして美しい映像の作品になるのではないかと思います。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:0
- ISBN:B097BDCHLW
- 発売日:2021年06月25日
- 価格:1800円
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