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ソネアキラ
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人は自然とどこまで共生できるのだろうか
レイチェル・カーソンの名前は知らなくとも、『沈黙の春』を知っている(題名だけは聞いたことがある)人は、存外多いはず。

春になっても、野の鳥は歌わない。鳥を沈黙させたのは…。「1962年に発刊された『沈黙の春』は、DDTなど化学薬品の害をはじめて世に訴えた」本で、アメリカ国内はもとより、世界中を震撼させた。その後、DDTは使用禁止となる。エコロジーの先駈け、エコロジストたちのバイブルとも言われる名著である。作者は、病に犯されながら執筆、1964年にガンで没している。

『沈黙の春』をはじめ、作者は生前わずか4冊しか著書を発表していない。長い間、埋もれたままになっていた大量の原稿や書簡、講演録を根気良く調べ、収集し、編集、解説した。これが、本書である。著作は年代順に構成されているが、30歳の時掲載された処女作から晩年にいたるまで、人間の自然破壊への厳しい批判、人と自然の共生を模索する姿勢は、一貫している。

科学者やサイエンスライターというと、何やらおカタく、難解な文章と想像しがちだが。さに、あらず。詩的な叙情あふれる文章である。優れた宗教書の趣(おもむき)すら感じられる。個人的に最も、胸うたれた部分のさわりを紹介しよう。

「雲にはこの地球と同じ古い歴史がある。雲は大地や海とともに、この世界を形づくる。雲は、風が空に描く物語。海を渡り、陸地を渡って進む、大気の塊の航跡を示している。―1行略―その大半は、地球上に生命が存在するために欠かせない一連の作用を示す、宇宙のシンボルだ。」(第3部つながり-生態学、人間社会と自然美23『雲』より)


魅力的なアンソロジーに束ねた編者にも「ありがとう」と、言いたい。 草原の上で、または、海辺で、風をB.G.M.にして読んでもらいたい。バーベキューばっかりするんじゃなくてね。
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ソネアキラ
ソネアキラ さん本が好き!1級(書評数:2185 件)

女子柔道選手ではありません。開店休業状態のフリーランスコピーライター。暴飲、暴食、暴読の非暴力主義者。東京ヤクルトスワローズファン。こちらでもささやかに囁いています。

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詩や小説らしきものはこちら。

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