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ぽんきち
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その女の名を聞いてはいけない。
著者・乙一が本名・安達寛高名義で監督し脚本も手掛けた同タイトル映画のノベライズ。

泊りがけの旅で若者が何人か集まれば、しばしば行われるのが怪談だ。夏の夜など、暗い中でそれぞれが持ちネタを披露する。こういう時に盛り上がるのが、「巻き込み型」のものではないだろうか。例えば、トイレに現れる幽霊が、紙を探していて、「この紙じゃない。この紙じゃない・・・。この髪だー」と居合わせた誰かの髪をいきなり掴む、などというのは定番だろう。

本作品もある意味、巻き込み型の怪談なのだが、怖ろしいのは聞いていた者が本当に呪われてしまうこと。話自体は比較的他愛無いものである。
異形の女がいる。男の後をつけてくる。お前は誰だと聞くと、女は名乗る。なぜ後をつけてくるのかと男が聞くと、女は「お前が私の名を知っているからだ」という。男は「それは俺だけじゃないだろう。別のやつのところに行け」という。それは誰だ、と女が問うと、男は、いや語り手は言う。今、この話を聞いているお前! 次はお前だ!!
普通ならひゃー!と飛び上がって終わる。
しかし、この話はそこでは終わらない。
実際、この怪談を知ってしまったものが、後日、一人、また一人と惨殺されていく。

主人公、瑞紀はやや内気な女子大生。大学でようやくできた友達の香奈が、目の前で異常な死を遂げる。怯え、落ち込む瑞紀の前に、鈴木春男と名乗る男が現れる。春男の弟、和人も同じように異常な死を遂げていたのだ。
香奈と和人は同じバイト先で働いていた。もう1人、同じくバイトの詠子と3人で親しくしていたらしい。
瑞紀と春男が詠子の元を訪れると、詠子は3人で行った旅先で聞いた不審な怪談の話をし始める・・・。

怪談の元をたどるといささか根の深いものであることがわかってくる。詠子の身も無事ではなさそうだったが、怪談を詳しく知ってしまった瑞紀や春男も徐々に事件に巻き込まれていく。
この事件に興味を持ったジャーナリストの間宮とともに、一連の事件の謎に迫ろうとする2人だったが・・・。

口裂け女などの都市伝説の趣もありつつ、昭和初期の因習や禍々しさも絡め、雰囲気のあるホラー。
ちょっとおもしろいのは、この怪談がネットで徐々に広まっていく展開。2人はこれを逆手にとって、呪いの元の「邪気」と闘おうともする。昭和の怪談にはありえない発想だろう。
実際、ネットには怪談が山ほど転がっていそうだが、中には本当に「ヤバい」ものがあるかもしれないからご用心・・・!

ラストに向かって事件は意外な様相を見せる。禍々しい女に縁のあるものが、実は2人のすぐそばに。だが2人はそれに気づかない。事件自体も完全に解決することはなく、独特の余韻を残して終わる。
次に呪われるのは、あなたかもしれない・・・。


<以下、ホラーをあまり読みなれない一読者の蛇足的ボヤキです>
途中まで、や、怖いじゃん!?と思いながら読んでいたのですが、ちょっと引っかかってしまったのです。
カバー裏にもあるので、ネタバレではないと思うのですが、呪われた人の死に方。心臓が止まると同時に、眼球が破裂する、というのですが。え、それって一体どういうこと?? 一応、死因自体は心不全とされているのですね。けど、それが一因で何でかわからないけど、眼球が粉々に飛び散ると。心臓が止まる原因が、体内の圧の変化とかであれば、眼球が飛び出すことはあっても、粉々になることはなくない?? もしそんなに粉砕されてしまうとしたら、眼球の真ん中に異常な圧が掛かるってことじゃない? そんなことってあるの?? それ心不全とはまったく関係なくない?? そもそも著者さんは何でそんな設定を思いついたのか?
・・・いやまぁいきなり心不全ということ自体も理屈では説明できないわけですが(^^;)。
何かそこが気になって以降はあんまり怖くなくなってしまいw
・・・しかし、これ、多分、映像で見るとめちゃくちゃ怖いんじゃないかと思うのですよね。なんだかんだいってビビりなので、映画は多分、見ないと思います(^^;)。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1825 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。現在、中雛、多分♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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この書評へのコメント

  1. ぽんきち2021-08-09 21:25

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  2. カドブン編集部2021-08-26 15:35

    いやはや、ホラー小説の書評なのに読んでいて何度も笑ってしまいました。さすがです!眼球の件は、確かに。と思いました。私もホラー苦手なので、映像ではあまり見たくないという点も共感ですw。書評ありがとうございました!

  3. ぽんきち2021-08-26 15:57

    カドブン編集部様

    ご高覧ありがとうございます♪
    楽しんでいただけてよかったですw 著者さんにはちょっと怒られそうかも(^^;)。

    ホラーの映像は後から夜中とかに思い出してひゃー(><)となるんですよね。怖い怖いw

  4. No Image

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