紅い芥子粒さん
レビュアー:
▼
”私”は、アーケードで生まれ、アーケードで育った。お父さんが、アーケードの大家さんだったから。そこは、おそらく世界一小さいアーケード。
”私”が16歳のころ、町の半分を焼く大火事があり、
映画館にいたお父さんは、焼け死んでしまった。
アーケードは奇跡的に焼け残り、再開発された町の中に、
時の流れの窪みにはまったように沈んだ。
二十歳を超えたいまも、”私”は、愛犬べべといっしょにアーケードで暮らしている。
アーケードの商品の配達係をしながら。
そのアーケードは、いっぷう変わったものを売る店ばかり。
朝から晩までドーナツを揚げている、輪っか屋さん。
古着からほどいたレースを売っている、レース屋さん。
動物や昆虫の目を売っている、義眼屋さん。
使い古しの絵葉書を売っている、紙店シスター。
メダルや勲章をあつかっている、勲章屋さん。
ドアノブばかりを売っている、ドアノブ屋さん。
そして、アーケードのつきあたりには、お店のレシートを見せれば、
だれでも利用できる図書休憩室があった。
まいにちそこに通って、百科事典を開き、「あ」から「ん」へ。
気が遠くなるような知の旅を続ける小学生の女の子、Rちゃん。
それぞれの店の店主や訪れる客の物語が、オムニバス風に語られる。
仕合せな人は、ひとりもいない。
不仕合せを嘆く人もいない。
孤独だが気高く、つつましく、ていねいに自分の人生を生きている人たち。
最後に明かされる、お父さんの死のいきさつ。
愛犬べべとの別れ。
語られる一人一人の人生を抱きしめて、泣きたくなるような物語だった。
映画館にいたお父さんは、焼け死んでしまった。
アーケードは奇跡的に焼け残り、再開発された町の中に、
時の流れの窪みにはまったように沈んだ。
二十歳を超えたいまも、”私”は、愛犬べべといっしょにアーケードで暮らしている。
アーケードの商品の配達係をしながら。
そのアーケードは、いっぷう変わったものを売る店ばかり。
朝から晩までドーナツを揚げている、輪っか屋さん。
古着からほどいたレースを売っている、レース屋さん。
動物や昆虫の目を売っている、義眼屋さん。
使い古しの絵葉書を売っている、紙店シスター。
メダルや勲章をあつかっている、勲章屋さん。
ドアノブばかりを売っている、ドアノブ屋さん。
そして、アーケードのつきあたりには、お店のレシートを見せれば、
だれでも利用できる図書休憩室があった。
まいにちそこに通って、百科事典を開き、「あ」から「ん」へ。
気が遠くなるような知の旅を続ける小学生の女の子、Rちゃん。
それぞれの店の店主や訪れる客の物語が、オムニバス風に語られる。
仕合せな人は、ひとりもいない。
不仕合せを嘆く人もいない。
孤独だが気高く、つつましく、ていねいに自分の人生を生きている人たち。
最後に明かされる、お父さんの死のいきさつ。
愛犬べべとの別れ。
語られる一人一人の人生を抱きしめて、泣きたくなるような物語だった。
投票する
投票するには、ログインしてください。
読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。
この書評へのコメント

コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:講談社
- ページ数:0
- ISBN:B00YQUPQ18
- 発売日:2015年05月15日
- 価格:660円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。























