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ぴょんはま
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マジョリティの誰もが意識せずに抱えている人種差別主義(レイシズム)に向き合うための最初の一歩。 交通事故現場で救急隊が被害者そっちのけではねた車の運転者をケアしなければならないような実態に気づく。
著者は64歳の白人女性。批判的言語分析と白人性研究の専門家。
反レイシズムトレーニングを実践しながら、自分自身の中にもある差別とも向き合おうとする。

差別は悪人が意図的にするものではない。偏見は潜在的で無自覚。
西洋社会で育った白人は、白人至上主義的な世界観に条件づけされており、その社会化の力を回避できない。
白人の心の脆さと結束力のせいで難しいが、善悪の二元論を乗り越え、人種差別的行為がどのように現れるかに注意を向ける必要がある。

白人が自分はレイシストでないと証明しようとしても説得力がない。非白人は白人がレイシズムを持っていることを知っている。
無意識の「カラーブラインド・レイシズム」がある。

白人女性の涙の意味。
「交通事故の現場にかけつけた救急隊員が、はねられた人が血を流しながら道に横たわっているというのに、はねた車の運転者を慰めるようなものです」
白人にとっては自分の気持ちが重要だが、非白人は、「怒れる恐ろしい非白人」にならないために、自分の感情を持つことを許されないのだ。

「悪魔の最も素敵な策略は、自分が存在しないと信じこませることだ」(シャルル・ボードレール)
1790年の帰化法は、自由な白人のみを対象としており、それは1952年まで続いた。
黒人が市民権を得てからも、人種隔離社会は続き、「分離すれども平等」(1896年、プレッシー対ファーガソン判決)とされ異人種間の結婚禁止もあった。

私の問題ではないと思っている白人たちもそろそろ成長し、世界をつくり直す方法を探るべきだと著者は言う。

白人ではない私たち日本人にとっても他人事ではない。
ある場面では差別される側であると同時に、無意識の差別に無自覚なことは白人以上かもしれない。
自分は女性差別などしていないと主張する男性についても、似たような無自覚はあると思われる。


行為者の意図ではなく現実にある被害に着目して、差別の有無は判断されなければならない。
無意識の差別に気づいたときに直ちに謝罪して改めようとする著者の謙虚さ、誠実さが潔い。
この姿勢は見習いたい。
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ぴょんはま
ぴょんはま さん本が好き!1級(書評数:791 件)

小学校時代は図書室に入り浸って子供向け全集を読破したり、本の続きが気になってランドセルを背負ったまま読みながら歩く子どもでした。小遣いでポプラ社のルパンを全巻揃えていたので、本屋の店頭で280円が380円になっていたときは大ショックでした。
中高時代は親に貰った昼食代で文庫を買ってしまい、昼食を摂らずに読んでいたことも・・・当時の愛読書はG・K・チェスタトンと「銀の匙」。
大学進学後は生身の人間の方が面白くなり読書量は減りましたが、30すぎてからまたぼちぼち読むようになりました。
出産を機に哲学の古典をソクラテス以前から読んでみたり(途中であえなく挫折)、シェイクスピア全集を読破したりしました(もちろん日本語)。
長距離電車に乗るのに本を持っていないと耐えられない体質でしたが、最近は年をとったのか、パズルでも大丈夫になってしまいました。
息子たちも本を語れる年になってきました。
息子らはアクションが好きなのですが、私は結局のところ、北村薫やら宮部みゆきの方が落ち着きます。

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