DBさん
レビュアー:
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魅力あふれる昔語りの話
今昔物語はおそらく古典の教科書で何話か読んでいると思うが、「今は昔」ではじまる平安末期の説話集と覚えた記憶しかない。
三十一巻から成り、天竺、震旦、そして本朝の三部にわかれていて仏教説話や世俗人情をテーマにした1000を越える短編集だという。
まるでジャパニーズアラビアンナイトのようだ。
芥川龍之介は今昔物語の中でも本朝世俗篇を尊重して「芋粥」などの話を書いたそうです。
田辺聖子もこの今昔物語の本朝世俗篇と源氏物語を王朝文化の両極端の世界を示すものとして愛しているそうだ。
本書ではその今昔物語から田辺聖子が選びぬき現代語訳した29の物語がおさめられている。
最初に登場するのは若い女に惚れた侍風の男が盗賊にまで身を落としてしまった話だ。
まずは男を色香で誘い、用事を言いつけ、さらには男を鞭で打ってみてとなかなか激しい。
惚れた弱みかすべて女の言うとおりに盗賊団の一味となった男だが、ある日女も仲間も忽然と姿を消した。
習い覚えた盗みを一人になっても続けて捕まってしまった男はそれでも女を忘れられないのだろうか。
短いながらに余韻の残る話だった。
「平中の恋」は何かで読んでことのある話だったが、その時もよくわからなかったが今回読んでみてもよくわからない。
都に並びなき風流男である平中が言い寄った女との恋の駆け引きですが、やり方が極端というかなんというか風流のかけらもない悪戯な気がする。
呪いたい相手の家がわからなくなって道案内を乞う生霊や、恩返しをする猿など登場する人物もバラエティに富んでいるが、中でも僧侶が主人公になっている話が多い。
人妻と密会を重ねた僧がその夫に見事に仕返しされる話や、遊んでばかりの学僧が言い寄った女にうまく操られて学問を究めていく話などなど。
帝の后に横恋慕した僧侶が鬼に変じる話はそのままアナトール・フランスのタイスを思い出す。
王朝時代らしく男女の仲も儚いものですが、浮気心で女に言い寄ってみたら自分の妻だったとか、自分を捨てて若い女に走った元夫への復讐を思いつめる女など、手紙をアプリに変えたら現代でもそのまま通用しそうな話も多い。
ツールが変わるだけで恋の駆け引きや人間の愛憎は平安時代と変わってないからなんだろう。
いつか今昔物語を読んでみたいと思った。
三十一巻から成り、天竺、震旦、そして本朝の三部にわかれていて仏教説話や世俗人情をテーマにした1000を越える短編集だという。
まるでジャパニーズアラビアンナイトのようだ。
芥川龍之介は今昔物語の中でも本朝世俗篇を尊重して「芋粥」などの話を書いたそうです。
田辺聖子もこの今昔物語の本朝世俗篇と源氏物語を王朝文化の両極端の世界を示すものとして愛しているそうだ。
本書ではその今昔物語から田辺聖子が選びぬき現代語訳した29の物語がおさめられている。
最初に登場するのは若い女に惚れた侍風の男が盗賊にまで身を落としてしまった話だ。
まずは男を色香で誘い、用事を言いつけ、さらには男を鞭で打ってみてとなかなか激しい。
惚れた弱みかすべて女の言うとおりに盗賊団の一味となった男だが、ある日女も仲間も忽然と姿を消した。
習い覚えた盗みを一人になっても続けて捕まってしまった男はそれでも女を忘れられないのだろうか。
短いながらに余韻の残る話だった。
「平中の恋」は何かで読んでことのある話だったが、その時もよくわからなかったが今回読んでみてもよくわからない。
都に並びなき風流男である平中が言い寄った女との恋の駆け引きですが、やり方が極端というかなんというか風流のかけらもない悪戯な気がする。
呪いたい相手の家がわからなくなって道案内を乞う生霊や、恩返しをする猿など登場する人物もバラエティに富んでいるが、中でも僧侶が主人公になっている話が多い。
人妻と密会を重ねた僧がその夫に見事に仕返しされる話や、遊んでばかりの学僧が言い寄った女にうまく操られて学問を究めていく話などなど。
帝の后に横恋慕した僧侶が鬼に変じる話はそのままアナトール・フランスのタイスを思い出す。
王朝時代らしく男女の仲も儚いものですが、浮気心で女に言い寄ってみたら自分の妻だったとか、自分を捨てて若い女に走った元夫への復讐を思いつめる女など、手紙をアプリに変えたら現代でもそのまま通用しそうな話も多い。
ツールが変わるだけで恋の駆け引きや人間の愛憎は平安時代と変わってないからなんだろう。
いつか今昔物語を読んでみたいと思った。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- 出版社:角川書店
- ページ数:243
- ISBN:9784041314272
- 発売日:1993年12月01日
- 価格:483円
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