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休蔵さん
休蔵
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古代にも城があった。近世城郭でも中世山城でもない、古代ならではの特殊な構造の城だ。存在する地域は限定されており、そのことも重要な特徴だ。その中身は本書に詳述されている。
 城といえば天守閣がそびえる近世城郭を思い浮かべがち。
 昨今は山を削り、掘って築いた中世山城も注目されるようになった。
 さらに時代を遡り、古代にもまた山城が存在していた。
 古代の山城は、国際情勢に応じて築かれたものという。
 そんな古代山城に焦点を定めて概説したのが本書だ。

 古代山城は朝鮮半島にルーツを持つという。
 その分布は北部九州から瀬戸内海際、さらに4近畿地方と限定される。
 そして、築城契機が明確であることも特徴としてあげられる。
 築城契機は白村江の戦い。
 白村江戸の戦いは、百済と新羅の戦いに日本と唐が加わった国際戦争で、日本が援助した百済は破れてしまう。
 敗戦の日本は、国内に攻め入られることに備えて百済官人の指揮のもと国内防備を固めた。
 それが古代山城のようだ。
 
 古代山城は27か所があるという。
 遺跡として把握され、発掘調査も進められている山城もあれば、『日本書紀』などに記載されているものの、遺跡として見つかっていない山城もあるそうだ。
 防御のための仕掛けは単純で、山を大きく石垣や土塁で取り囲み、内部に平坦面を造成して建物を建てるというもの。
 石垣は谷を横断することもあり、そこには水門も築く念の入れようだ。
 しかし、防御力としては、どこまで期待できたのだろうか。
 幸い、敗走した日本への追撃はなかったようで、古代山城が戦場になることはなかったとのこと。
 古代山城の防御力の実際は不明のままだ。

 古代史はロマンという用語で括られて、面白おかしく論じられることもある。
 古代山城はその素材として最適なように思うが、あまり過剰な描かれ方はしていないような印象がある。
 それはあまりに地味すぎるからか。
 それはともかく、あまり取り上げられない以上、自らの足で踏査し、実物を見てその構造やスケールを感じることが大切な遺跡のように思う。
 いくらか史跡整備も行われているため、訪問が不可能というわけではないが、それはやはり防衛のための施設。
 公共交通手段での訪問は難しい。
 自家用車かレンタカーが必要だ。
 個人的には4か所、足を踏み入れていたが、多いほうだろうか。
 この4か所では、方形の石材が並べられていただけのこともあれば、石垣をきっちりと作って巡らせている場合もあった。
 単純な構造ではあるが、山の上で、重機を使わずに築いたと思うと、驚愕である。
 ちなみに、最大の古代山城は福岡県の大野城ということで、ここにはまだ行ったことがない。
 今まで見た時以上の驚きがあることだろう。
 行ったことがない山城のほうが圧倒的に多いため、密を避ける国内旅行の行先としてもよさそうだ。
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:450 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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この書評へのコメント

  1. だまし売りNo2021-08-17 20:54

    前方後円墳を作った技術力は衰えたのでしょうかね。

  2. 休蔵2021-08-17 21:41

    林田力さん、コメントありがとうございます。
    土木工事としては一括りにできそうですが、前方後円墳とはまったく別物の技術を要するみたいですよ。
    ただ、どちらも大がかりな工事であるため、多くの人たちが強制的に働かされたのでしょうねえ。

  3. No Image

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