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たけぞう
レビュアー:
日本スペシャル版のケン・リュウの短編集。
映画Arcを日本で作ることとなり、タイアップで編纂された一冊です。
先行書評で、紙の動物園に惹かれていました。
巻末の翻訳者解説によると、6冊発行されているケン・リュウの短編集を
さらに絞りこんだとのこと。
ケン・リュウ入門に最適で、ヒット作が多く採られています。

目次を載せます。
Arc アーク
紙の動物園
母の記憶に
もののあはれ
存在(プレゼンス)
結縄(けつじょう)
ランニング・シューズ
草を結びて環を銜えん(たまをくわえん)
良い狩りを
石川慶監督x原作者ケン・リュウ対談
主演・芳根京子メッセージ
編・訳者あとがき

読んで衝撃を受けました。先行書評で目をつけていましたが、ここまでとは。
想像を超えていました。
もし同じような人がいたら早めに読むことをお薦めしますね。

特に気に入ったのが紙の動物園です。
ヒューゴー賞短編、ネビュラ賞短編、世界幻想文学大賞短編の三件受賞と、
とてつもない評価を受けています。

中華系の母とアメリカ人の父を持ち、主人公のぼくはアメリカで暮らしています。
母は英語を話せません。
ぼくは、幼い頃はそんなことは気にもせず、母と遊んでいました。
母は紙を折って動物たちを作ってくれました。
複雑に形を整え、最後に息をふっと吹き込むと、
小さな紙の虎はウォーーーと唸りました。

そう、これが紙の動物園です。
母の吹き込む息は、深い愛情の形です。
小さいぼくは中国語が分かります。英語も分かります。
そもそも言葉の違いなんて意識しない世界の住人です。
あるのは、満ちあふれた母の愛です。

成長とともに、ぼくの意識は変わっていきます。
そんなこころの変化は、人間なら誰でもあたり前だと思えます。
でも一方で、こころ変わりを認めたくない気持ちが読み手の中にも生じ、
読み手のこころの葛藤が始まります。

二十ページちょっとの短篇です。短いです。
でも、内容が桁違いに濃密なのです。
大きな物語を一本読んだのと同じくらい、こころに澱が降り積もります。
それなのに読み味はよく、難しい文章はどこにもありません。
こんな不思議な現象がどうして起こるのか分かりません。

きっと、これはマジックなのです。
紙に息を吹き込み、虎を生むこと。
それは、小説という本に息を吹き込むことと、同じなのかもしれません。
本を読んでいるわたしの前で、紙でできた虎や仲間たちが
楽しそうに飛び回っている気がしてくるのです。

信じられない読書体験ができます。
ほかにも珠玉の作品が揃っていますよ。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1466 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2021-08-09 06:08

    ケンリュウデビューおめでとうございます。
    どうぞこれからもごひいきに!
    (by 本が好き!ケンリュウファンクラブ会員)

  2. たけぞう2021-08-09 11:21

    >かもめ通信さん
    ケンリュウを教えて頂きありがとうございます。著者がプログラムの分野に強そうで、世代的にもあうので、ケンリュウはゲームのキャラクターの合成名ですねと茶化したアホコメントを思い出しました。昇竜拳にぶちのめされました(まだ言うか

  3. No Image

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