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morimoriさん
morimori
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 品川遊郭一番人気の板頭だったお染、近頃はお客も遠のき、紋日前に必要な金の工面に頭を悩ませていた。
 遊郭と言えば、吉原。幕府に許可され設置された吉原は、格式の高い場所だったという。吉原以外のもっとも大きな色街が、江戸4宿と呼ばれた千住、板橋、内藤新宿、品川の岡場所だった。小説に出てくる板頭は、1ヶ月に稼いだ揚げ代がもっとも多かった遊女の名札が、いちばん最初に掲げられたことに由来する。

 紋日は、物日が転じられたものと考えられ、年中行事や祝祭日、婚礼、葬式などの儀礼の行われる日全体を指すそうだ。こういう日には、紋付の晴れ着を着ることが多かったので遊里では、紋日になったといわれている。 解説には、以上のようなことが書かれており、なぜ紋日にお金が必要なの?板頭ってなに?と首を捻りつつ読み始めたが、いろいろとしきたりの多い遊里のことが理解できた。蔦屋重三郎の刊行した「吉原細見」に紋日が、掲げられている写真とともにある解説。さらに、品川宿についての詳しい解説は興味深かった。

 小説に遊里についての解説があるものを、読んだのは初めてだったので作品「品川心中」の登場人物の心情がより伝わってきた。主人公のお染は、以前は板頭だったのだが、年季があと2年と残すところ最近では、なかなか客が来ない。馴染の客は、亡くなったり、店が傾いたりしてすっかり足が遠のいていた。紋日が近いのに、これでは妹分たちへの示しがつかない。いっそのこと自死を考えるが、それでは紋日に金が無くて死んだと笑われる。そこで、心中を考えるのだが・・・という話。

 女郎の話といえば、親に売られて切なく哀しい内容になりがちだが、この小説はどこか滑稽で温かさを感じた。母が死に、父も死に叔父叔母夫婦に売られたお染だったが、自分の運命を受け入れて自分の居場所で精一杯生きる姿が清々しい。「女郎は、自分の命を軽々しく考える傾向にある」と男衆の喜助は、お染の様子がおかしいことに注意を払う。お染が、心中を考えた理由のひとつには、お染をかわいがってくれた雛菊姐さんの自死が関係しているのかもしれない。そして、妹分のこはるは、お金の工面に困っているお染の役に立ちたいと思っているのだが、お染はそれを受けつけない。

 遊里の中の生活は、苦しみや悲しみが多くあるのだろうが、古典落語を現代の時代小説に適応させているだけにお染のまわりの人たちは、家族の様で人情も感じられた。

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morimori
morimori さん本が好き!1級(書評数:951 件)

多くの人のレビューを拝見して、読書の幅が広がっていくのが楽しみです。感動した本、おもしろかった本をレビューを通して伝えることができればと思っています。

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