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たけぞう
レビュアー:
飾らない文章が魅力的です。
デビュー作の「……(略)……入らない」のインパクトが強すぎて、
題名だけ覚えてしまいました。もちろん、どん引きです。
著者の名前はスルーしていました。

最近、爪切男さんのもはや僕は人間じゃないというエッセーを読んで
こだまさんとつながりがあったことを知り、
Webで検索した二人の掛け合いがとても楽しそうだったので、
著作を読んでみたいと思っていました。
爪切男さんの書評はこちら:「もはや僕は人間じゃない」

偶然にも、爪切男さんの本の読後すぐに、こだまさんの本の新刊情報が
入ってきたので、お試しで手に取りました。選んでよかったです。
素晴らしいエッセーを書く人でした。

いまは出版不況で、出版社は刊行点数に頼った物量作戦でしのいでいます。
だから名も無い人が書いたエッセーは、内容がよくても耳目を集めないと
ダメなんでしょうね。難しい時代です。
一作目の題名はあれとしても、こうして普通に書いた四冊目が発行されたので、
認知度が上がってきたということでしょう。
わたしはこの作品を気に入ったので、著者によかったねと声をかけたいです。

2018年、担当者との打合せで旅について書こうと思い立ったことが
この一冊につながりました。

北日本の田舎町で育ったこだまさんは、子どもの頃はひどい赤面症で、
言葉に詰まって笑われるのが怖くて気軽にしゃべれない人でした。
その代わり文章を書くのは大丈夫だったので、文通を始めました。
相手の子は京都在住でした。
こだまさんはその子との文通をこころの支えにしていました。

高校、大学、社会人。いつしか文通は途切れました。
初めて京都に行けたのは、三十代に入ってからでした。
相手のチカちゃんに想いを馳せながら、京都の路地を巡る記事に
こころを打たれました。
それが一本目のエッセーです。

繊細で、時間をかけてようやく旅に出られるようになった人です。
もしエッセーが認められなかったらと思うと、胸が苦しくなりますね。
生きづらさを抱えながら、どうにか折り合いをつけ、
時には逆転の発想で乗り越えてきたこだまさん。
旅先での昔の失敗がずっとこころに引っかかっている人で、
おかしみを交えながらこころを浄化していくのです。
大人になっても人との付き合い方がわからない。
友達と呼べる人もいない。特に欲しいとは思わない。
長年そんな自分はおかしいんじゃないかと気にしていたけれど、
「よそ者」としての素質が備わっていると思えばどうだろう。
そうして、少しでもかかわってくれた名前も知らない人のことを
大事に思いながら次の街へ行く。私はそれでいいんじゃないか。

泣きそうになりました。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1468 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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