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efさん
ef
レビュアー:
トルストイが描き出す死と愛
 タイトルになっている2編が収録されています。
 さっそく作品のご紹介。

〇 イワン・イリイチの死
 控訴審判事であるイワン・イリイチの死を描きます。
 イワンは、一族の中の出世頭で、猟官運動の成果もあり、結構な職を手に入れ、理想的な家庭生活を送れる身分となりました。
 ところが、突然脇腹辺りが痛み出し、何人もの医者に診てもらっても一向に良くなりません。
 結局、何の病気かもはっきりしないまま死んでしまうのです。
 さて、人が死んでいく時、どういう経験をするものなのでしょうか?
 それは結局のところ分からないわけですよね。
 唯一、その時のことを語れる人は亡くなってしまうわけですから。
 瀕死の状態から生還した方というのはある程度語れるのかもしれませんが、果たしてその方が直面した状態が本当に死の直前の状態だったのかは分かりませんし、さらに、そこからどうやって死んでいくのかはやはり語ることはできないわけです。
 こんな究極的な状態がどういうものになるのか、それをトルストイが描き出してみせたのが本作ということになるでしょうか。

〇 クロイツェル・ソナタ
 私がこの本を読んだのは、この作品を読んでみたかったからでした。
 大変うろ覚えだったのですが、確か悪魔が出てくる作品じゃなかったか……などと思い読んでみたのですが、全く違いました!
 物語は、列車でたまたま乗り合わせた一人の男が語る妻殺しの顛末なのです。
 この男性、独特の人生観、哲学を持っており、まずは彼が語るところの愛について聞かされることになります。
 大変偏った思想なのですが、かなり理屈をこねた話が続くのです。
 そういう考えの持ち主が、ある時、妻の浮気を疑い始めます。
 妻はピアノを弾くのですが、合奏が大好きだったところ、ヴァイオリンを弾くという色男が現れ……という流れなんです。
 実際に妻が浮気をしたのかどうかははっきりしないまま終わるのですが、この男、遂に妻を殺してしまったと言うのです。
 この男が語る愛についての考えが、トルストイ自身のものなのかどうかは不明ですが、相当にシニカルな物の見方を展開します。
 そうそう、タイトルになっているクロイツェル・ソナタとは、ベートーヴェンのあの曲です。
 作中人物の口を借りて、あの曲はとんでもない曲だと語るのですよ。

 両作を読んで、「まあ、なるほどね」的な感想を持ちました。
 飛び抜けて面白いとまでは思いませんでしたが、さりとてつまらない作品というわけでもなく、世界的文豪の作品ですから、一度読んでみるのも悪くないという感じでしょうか。
 語り口は、現代のスピーディーな展開に慣れている私たちにとっては、やや重たい、もっさりとした感じを受けるかもしれません。
 さほど長い作品でもないので、気が向いた時にでも手に取ってみられるのもよろしいかと思います。


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ef
ef さん本が好き!1級(書評数:4916 件)

幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!

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