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ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
破天荒でほんぽうで。
岩波少年文庫100冊マラソン 15冊目


七つの物語の原案は井原西鶴によるものであるが、古典をそのまま現代語に移しかえただけのものではなく、ほとんどの作品は、「西鶴の作品を種にして、それに枝葉をつけ、かなり思い切って作りかえたりも」したそうだ。
そうはいっても、「笑いと悲哀のまざりあった世の中の姿をとらわれのない精神で見ている」「ほんぽうで豊か」な空想力など、西鶴らしさを充分に堪能できる一冊になっている。
いつか本物の西鶴を読んでみたいと思えるような、入口にもなっている。


今だったらSFとかファンタジーに分類されるのでは、と思うような破天荒な不思議譚、喜劇あり悲劇あり、怪談あり。どの物語も先に何が起こるか予想できない。
舞台は、九州だったり北陸だったり、物語ごとに違うし、主人公の身分も、乞食に農民、商人から侍までいろいろで、元禄時代の大阪にいた作者がどうして、こんなにも様々な舞台の、様々な身分の人々の物語を、自由闊達に思い描くことができるのだろうか、と不思議だった。


人の気持ちの移り変わりにはらはらして、読み終えた後に、登場人物の過去を振り返り、あそこで足踏みしていたらこんなことにならずに済んだのに、と思ったり。
あるいは、ある疑惑が事なきを得ての結末に、これを大団円と呼べるのか、ここから始まるふかい悩み、決して誰にも話すことが出来ない苦しみを想像して寒々としたり。
またあるいは、他人から見たら愚か者に過ぎないだろうが、本人は満足しているのだとしたら、それは果報者の物語といっていいのか、と思ったり。


新しい世界を覗いているような気持ちだ。
西鶴がおもしろいのか。翻案が素晴らしいのか。
七つの物語どれもよかった。

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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1742 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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