休蔵さん
レビュアー:
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「すべてはどのような視点で世界を見るかで決まる」(337ページ)ということを強く教えてくれた1冊。生ぬるい環境に身を置くのはやめにしよう。
高度に専門化した社会では、その専門性を共有するグループの殻に閉じこもることがよくあるという。
「サイロ」、牧場で、飼料などを一時的に貯めておくための倉庫のこと。
専門化された社会では、共有の知識を有するグループごとに分割されることが多く、大規模企業であればあるほどその傾向は強そうだ。
共通する知識、言語、習慣ならでは居心地の良さ、便利さはあるものの、内部に蓄積されたマイナス面は見過ごされがち。
このような高度に専門化し分割されたことにより生じた悪弊を、サイロに例えた現象、「サイロ・シンドローム」について、本書は良い例、悪い例両方を示して解説してくれる。
サイロにこもることの悪弊は、さまざまな所に現出する。
企業内は複数の部署に分割されるが、それは当然のことで、それ自体は問題ない。
問題なのはそこに生じる仲間意識が異様に高まることだろう。
自分たちの部署が出し抜こうと、他の部署にも有意義となり得る情報を秘匿することは当たり前で、場合によっては相手の足を引っ張ることもある。
同じ企業なのにだ。
企業全体の飛躍よりも、自分が属する狭いサイロを最優先してしまう。
このことのバカらしさは、改めて論ずるまでもないが、自分がそんな環境に属していると抗うことは難しくなる。
サイロに籠らないためにはどうすればいいか。
そのためには、サイロに籠らないことが有益に働く環境が必要で、それは報酬の与え方で分かりやすく表明できるという。
例えば、数多くこなすことがとある部署の有益となるのであれば、他所が得意としそうな事例も自分で抱え込んでしまう。
それが、企業全体にとっては、マイナスに働くことになりそうでも。
企業全体で特定部署が出し抜くことに意味がないようにすれば、こんなマイナスが実行されることはなくなる。
そういう観点からは、固定給が必ずしも悪いとは言い切れなくないのかもしれない。
もっと突っ込んだ対策では、部署横断の機会を作ることがあげられている。
部署が変わればまったく知らない人という状況を、可能な限り減らすことが肝要なようだ。
その手法は様々で、本書では具体的に示されている。
サイロは個人単位でも発生するようだ。
個人的な興味関心はどうしても偏りがちで、興味を広げることは思ったより難しい。
生活環境が固定されがちなこともその原因のひとつではある。
そうすると、自分と趣味を同じくする人とだけ付き合うようになり、そのコミュニティで有効な思考に囚われていく。
他の人からは奇異な目で見られても、そのコミュニティに属していれば安心できる。
そのことが良いと言い切れないのは、想像に難くない。
とは言え、異なる考え方の人たちと付き合うようにするのは困難だ。
ただ、その困難さを打破することこそが、サイロを脱出することそのものなのだ。
政治家になると、なんとなく特有の顔つきになってくるように思っていた。
話し方もそうだ。
でも、どうやらそれは政治家に限った話でないことで、自分自身のこととして考える必要があったようだ。
そして、それを打破することを意識して日々を送ることも必要なことのようだ。
できるだけ日常から外れた行為を意識して実践すること、普段行かない場所に行き、読まない種類の本を読み、あまり食べたことがないものを食べる。
自分の部署に留まらず、迷惑をかけない範囲で他所の部署の人と軽い日常会話を交わすようにしてみる。
そんなささやかな行動の積み重ねは、自分を少しずつ変えていくに違いない。
ささやかだからこそ誰にでもできる行動だけど、安住の地にいるからこそ相当に難しい試み。
そんな試みを心がけていきたい。
「サイロ」、牧場で、飼料などを一時的に貯めておくための倉庫のこと。
専門化された社会では、共有の知識を有するグループごとに分割されることが多く、大規模企業であればあるほどその傾向は強そうだ。
共通する知識、言語、習慣ならでは居心地の良さ、便利さはあるものの、内部に蓄積されたマイナス面は見過ごされがち。
このような高度に専門化し分割されたことにより生じた悪弊を、サイロに例えた現象、「サイロ・シンドローム」について、本書は良い例、悪い例両方を示して解説してくれる。
サイロにこもることの悪弊は、さまざまな所に現出する。
企業内は複数の部署に分割されるが、それは当然のことで、それ自体は問題ない。
問題なのはそこに生じる仲間意識が異様に高まることだろう。
自分たちの部署が出し抜こうと、他の部署にも有意義となり得る情報を秘匿することは当たり前で、場合によっては相手の足を引っ張ることもある。
同じ企業なのにだ。
企業全体の飛躍よりも、自分が属する狭いサイロを最優先してしまう。
このことのバカらしさは、改めて論ずるまでもないが、自分がそんな環境に属していると抗うことは難しくなる。
サイロに籠らないためにはどうすればいいか。
そのためには、サイロに籠らないことが有益に働く環境が必要で、それは報酬の与え方で分かりやすく表明できるという。
例えば、数多くこなすことがとある部署の有益となるのであれば、他所が得意としそうな事例も自分で抱え込んでしまう。
それが、企業全体にとっては、マイナスに働くことになりそうでも。
企業全体で特定部署が出し抜くことに意味がないようにすれば、こんなマイナスが実行されることはなくなる。
そういう観点からは、固定給が必ずしも悪いとは言い切れなくないのかもしれない。
もっと突っ込んだ対策では、部署横断の機会を作ることがあげられている。
部署が変わればまったく知らない人という状況を、可能な限り減らすことが肝要なようだ。
その手法は様々で、本書では具体的に示されている。
サイロは個人単位でも発生するようだ。
個人的な興味関心はどうしても偏りがちで、興味を広げることは思ったより難しい。
生活環境が固定されがちなこともその原因のひとつではある。
そうすると、自分と趣味を同じくする人とだけ付き合うようになり、そのコミュニティで有効な思考に囚われていく。
他の人からは奇異な目で見られても、そのコミュニティに属していれば安心できる。
そのことが良いと言い切れないのは、想像に難くない。
とは言え、異なる考え方の人たちと付き合うようにするのは困難だ。
ただ、その困難さを打破することこそが、サイロを脱出することそのものなのだ。
政治家になると、なんとなく特有の顔つきになってくるように思っていた。
話し方もそうだ。
でも、どうやらそれは政治家に限った話でないことで、自分自身のこととして考える必要があったようだ。
そして、それを打破することを意識して日々を送ることも必要なことのようだ。
できるだけ日常から外れた行為を意識して実践すること、普段行かない場所に行き、読まない種類の本を読み、あまり食べたことがないものを食べる。
自分の部署に留まらず、迷惑をかけない範囲で他所の部署の人と軽い日常会話を交わすようにしてみる。
そんなささやかな行動の積み重ねは、自分を少しずつ変えていくに違いない。
ささやかだからこそ誰にでもできる行動だけど、安住の地にいるからこそ相当に難しい試み。
そんな試みを心がけていきたい。
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ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
それでも、まだ偏り気味。
いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい!
この書評へのコメント
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:0
- ISBN:B07QXYDD32
- 発売日:2019年05月09日
- 価格:1120円
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