DBさん
レビュアー:
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姉妹の運命が交差する話
サドの考える美徳を美しい姉妹に託して書かれた小説だ。
姉はジュリエットという名で十五歳、妹のジュスチーヌは十二歳。
それまではパリの大銀行家の娘として何不自由ない暮らしをし、修道院で最高の教育を与えられていた。
だが父親が破産して両親とも亡くなった結果、引き取ってくれる親戚もないまま修道院から放り出されたのだった。
姉のジュリエットはその美貌を武器に娼館へ自分を売りに行き、男たちを破産させ五年後にはロルサンジュ伯爵と結婚して伯爵夫人になるや夫を殺し優雅な生活を送っていた。
だが妹のジュスチーヌは汚辱に身をゆだねるくらいなら死んだほうがいいと、姉と別の道を進んでいく。
正反対の道を進んだかのような二人だったが、別れて十五年後に不思議な縁で再会した。
方や優雅な貴族として、方や殺人と窃盗と放火の罪を着せられた死刑囚として。
お互いの素性に気づかないまま、姉は妹になぜ罪人となってしまったかを尋ねる。
そうしてジュスチーヌの口から彼女の美徳の不幸が語られていきます。
お針子か女中の勤め先を探そうとひとりで彷徨うジュスチーヌですが、毎回彼女の貞操を狙う主人のもとを逃げ出す羽目になる。
その度に持っていたわずかばかりな金や自尊心を奪われていくが、それでもジュスチーヌは美徳を捨てようとはしない。
下心のある悪人の前で自分の美徳を強調しても反感を買うだけだということがわからないほど若かったのか。
しかも逃げ出すたびに前よりもさらにひどい相手に捕まるということを繰り返していきます。
最初はケチな商人のところ、そして盗賊団、助けられた相手のすべてを奪う悪人、聖職者という名のもとに夜ごとに乱痴気行為を繰り返す集団。
自分の娘や少年を相手にするような男たちも、表の顔は立派なものだった。
そんな中で最下層の娼婦でもしないような行為に汚されるジュスチーヌだったが、それでも心の中の美徳は失わない。
むしろ妥協できなかったからこそここまで落ちたのかもしれない。
はっきり言って文学というよりもサドの欲望を文字に練りこんだかのような小説でしたが、いくら牢獄の中で他にすることがないからと言ってここまで延々とよく書いたものだと思った。
他人を貶めることで自己の認証欲求を満足させるという、軽いものではマウンティングから重症化すると残虐性と呼ばれるが、自己肯定をするために他人を利用する人間は意外と多いのかもしれない。
だからこそサドの名前が残り続けているんだろう。
姉はジュリエットという名で十五歳、妹のジュスチーヌは十二歳。
それまではパリの大銀行家の娘として何不自由ない暮らしをし、修道院で最高の教育を与えられていた。
だが父親が破産して両親とも亡くなった結果、引き取ってくれる親戚もないまま修道院から放り出されたのだった。
姉のジュリエットはその美貌を武器に娼館へ自分を売りに行き、男たちを破産させ五年後にはロルサンジュ伯爵と結婚して伯爵夫人になるや夫を殺し優雅な生活を送っていた。
だが妹のジュスチーヌは汚辱に身をゆだねるくらいなら死んだほうがいいと、姉と別の道を進んでいく。
正反対の道を進んだかのような二人だったが、別れて十五年後に不思議な縁で再会した。
方や優雅な貴族として、方や殺人と窃盗と放火の罪を着せられた死刑囚として。
お互いの素性に気づかないまま、姉は妹になぜ罪人となってしまったかを尋ねる。
そうしてジュスチーヌの口から彼女の美徳の不幸が語られていきます。
お針子か女中の勤め先を探そうとひとりで彷徨うジュスチーヌですが、毎回彼女の貞操を狙う主人のもとを逃げ出す羽目になる。
その度に持っていたわずかばかりな金や自尊心を奪われていくが、それでもジュスチーヌは美徳を捨てようとはしない。
下心のある悪人の前で自分の美徳を強調しても反感を買うだけだということがわからないほど若かったのか。
しかも逃げ出すたびに前よりもさらにひどい相手に捕まるということを繰り返していきます。
最初はケチな商人のところ、そして盗賊団、助けられた相手のすべてを奪う悪人、聖職者という名のもとに夜ごとに乱痴気行為を繰り返す集団。
自分の娘や少年を相手にするような男たちも、表の顔は立派なものだった。
そんな中で最下層の娼婦でもしないような行為に汚されるジュスチーヌだったが、それでも心の中の美徳は失わない。
むしろ妥協できなかったからこそここまで落ちたのかもしれない。
はっきり言って文学というよりもサドの欲望を文字に練りこんだかのような小説でしたが、いくら牢獄の中で他にすることがないからと言ってここまで延々とよく書いたものだと思った。
他人を貶めることで自己の認証欲求を満足させるという、軽いものではマウンティングから重症化すると残虐性と呼ばれるが、自己肯定をするために他人を利用する人間は意外と多いのかもしれない。
だからこそサドの名前が残り続けているんだろう。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- 出版社:岩波書店
- ページ数:0
- ISBN:9784003259726
- 発売日:2001年01月16日
- 価格:1386円
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