yukoさん
レビュアー:
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この本を読んだ翌日にフィンレイソン展を見に行ったら、久しぶりにお裁縫がしたくなりました。
階級社会の残る19世紀末のイタリア。
コレラで家族を次々と亡くし祖母と二人きりになったのは五歳の時。
七歳から祖母は簡単な針仕事を「私」にさせるようになりました。
町には力のある、アトリエをかまえて従業員も雇っていた本物の女性裁縫師は二人いたけれど、祖母は日々のごく単純な縫物を頼む「お針子」とみなされていました。
そしてその孫である私も同じ。
貧しい中でも厳しく祖母にしつけられ、祖母の愛情を受けて育った「私」
彼女もまた祖母と同じようにお屋敷に通って針仕事をするようになります。
お屋敷の中で起きる驚くべき上流階級のお金持ちたちの秘密。
見下してひどい態度をとるものもいれば、
まるで友人のように接してくれるお嬢様も。
小さなお針子は、ミシン一つで自分の力だけで生きていくのです。
表紙の絵は物語に出てくる手回しミシン。
さすがに手回しミシンは私は見たことも使ったこともないのですが、
実家には足踏みミシンが小さいときにはまだあって、まだ十分使えることができました。
私の年代ではお裁縫をする人は周りには全くいないのですが、
母が洋裁和裁と教室にちゃんと通っていた人なので、私は洋服も着物も母に作ってもらっていた経験から、思春期の頃から洋服を自分でお直ししたりアレンジしたり、リボンでブローチやヘアアクセサリを作ってみたり、ずっとバンドやっていたので衣装を作ってみたり。
子供ができたら手作りの洋服を着せるのが当然のことと思う、そんな環境に育ちました。
なので物語の中で、新生児は肌が弱いから縫い目を産着の外側に来るようにしなくてはいけない、とか、ピンタックやプリーツ、パフスリーブを作り上げていく場面はかなりわくわくしました。
物語は「私」が通う上流階級の家庭の中で起きる様々な事件をもとに、
たった一人で、お針子という仕事に誇りを持ち、貧しくとも前を向き生きていく、一人の女性の成長物語になっています。
エピソードの中にはミステリもあり、ロマンスもあり。
「私」自身ももちろん、彼女にかかわる女性たちはみなたくましい。
老いる者も若いものも、
金持ちも貧乏人も、
善良な人も、そうでない人も、
とにかく女性は生きる力を強く持っている。
階級社会で男性優位な時代、男たちに、階級に振り回され、自分の思い通りに生きられなかった女性たちが、どんな状況下にあっても強くたくましく生を全うしようとする。
それは諦めであったり、悲しみであったりもするのですけどね。
ちょうどこの本を読み終わった翌日に、京都文化博物館のフィンレイソン展を見に行ってきたのですが、華やかなデザインの布地をたくさん見て、またお裁縫ができるような心にゆとりができればなぁとしみじみ思いました。
今は安くてとても質のいい既製服はたくさんあります。
布地を手に入れて自分で作るほうがずっと高くついたりするんです。
それでも例えば子を思ってちくちくと縫ったお洋服や、
自分の思い出の洋服を時代に合わせて手直しして着続ける、
そうやってモノを大事にすること、自分の手で一から作り上げることって、とっても素敵なことだと思うんですよね。
縫物をされる方にはたまらなくワクワクできる本だと思いますよ。
コレラで家族を次々と亡くし祖母と二人きりになったのは五歳の時。
七歳から祖母は簡単な針仕事を「私」にさせるようになりました。
町には力のある、アトリエをかまえて従業員も雇っていた本物の女性裁縫師は二人いたけれど、祖母は日々のごく単純な縫物を頼む「お針子」とみなされていました。
そしてその孫である私も同じ。
貧しい中でも厳しく祖母にしつけられ、祖母の愛情を受けて育った「私」
彼女もまた祖母と同じようにお屋敷に通って針仕事をするようになります。
お屋敷の中で起きる驚くべき上流階級のお金持ちたちの秘密。
見下してひどい態度をとるものもいれば、
まるで友人のように接してくれるお嬢様も。
小さなお針子は、ミシン一つで自分の力だけで生きていくのです。
表紙の絵は物語に出てくる手回しミシン。
さすがに手回しミシンは私は見たことも使ったこともないのですが、
実家には足踏みミシンが小さいときにはまだあって、まだ十分使えることができました。
私の年代ではお裁縫をする人は周りには全くいないのですが、
母が洋裁和裁と教室にちゃんと通っていた人なので、私は洋服も着物も母に作ってもらっていた経験から、思春期の頃から洋服を自分でお直ししたりアレンジしたり、リボンでブローチやヘアアクセサリを作ってみたり、ずっとバンドやっていたので衣装を作ってみたり。
子供ができたら手作りの洋服を着せるのが当然のことと思う、そんな環境に育ちました。
なので物語の中で、新生児は肌が弱いから縫い目を産着の外側に来るようにしなくてはいけない、とか、ピンタックやプリーツ、パフスリーブを作り上げていく場面はかなりわくわくしました。
物語は「私」が通う上流階級の家庭の中で起きる様々な事件をもとに、
たった一人で、お針子という仕事に誇りを持ち、貧しくとも前を向き生きていく、一人の女性の成長物語になっています。
エピソードの中にはミステリもあり、ロマンスもあり。
「私」自身ももちろん、彼女にかかわる女性たちはみなたくましい。
老いる者も若いものも、
金持ちも貧乏人も、
善良な人も、そうでない人も、
とにかく女性は生きる力を強く持っている。
階級社会で男性優位な時代、男たちに、階級に振り回され、自分の思い通りに生きられなかった女性たちが、どんな状況下にあっても強くたくましく生を全うしようとする。
それは諦めであったり、悲しみであったりもするのですけどね。
ちょうどこの本を読み終わった翌日に、京都文化博物館のフィンレイソン展を見に行ってきたのですが、華やかなデザインの布地をたくさん見て、またお裁縫ができるような心にゆとりができればなぁとしみじみ思いました。
今は安くてとても質のいい既製服はたくさんあります。
布地を手に入れて自分で作るほうがずっと高くついたりするんです。
それでも例えば子を思ってちくちくと縫ったお洋服や、
自分の思い出の洋服を時代に合わせて手直しして着続ける、
そうやってモノを大事にすること、自分の手で一から作り上げることって、とっても素敵なことだと思うんですよね。
縫物をされる方にはたまらなくワクワクできる本だと思いますよ。
- 娘の七五三の時に。お参りは着物で、両家のお食事会のために作った黒のワンピースとエプロンドレスです。
- この生地でクッションカバーとかベッドカバー作りたいー!と思いながら見てました(笑)
- コロナで延期されてたので本当に楽しみに待っていました。
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仕事のことで鬱状態が続いており全く本が読めなかったのですが、ぼちぼち読めるようになってきました!
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- 出版社:河出書房新社
- ページ数:0
- ISBN:9784309208206
- 発売日:2021年03月23日
- 価格:2695円
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