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星落秋風五丈原
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私は殺人者?ヒロインは昏い部屋から出られるのか
 自殺を図り、奇跡的に助かったらしい写真家の女性ジンクス・キングズレーは、昏睡から目醒めたとき、過去数日間の記憶をなくしていた。婚約者が親友と駆け落ちしたショックで自殺を図ったのだと説明されるが、どうにも納得がいかない。やがて絶望と恐怖に染めあげられた出来事が、心のどこかから甦ってくる。

 よるべなき黒人女性が酷い扱いを受ける「蛇の形」とは対極の、一代で巨万の富を築いた大立者の娘という至れり尽くせりヒロイン。しかし富があるから幸福というわけではない。後妻と異母弟はとんでもないドラ息子たちで、生母がいない長女として父親から溺愛されるジンクスは、彼女達から恨まれる。そもそもジェインという名前があるのにジンクスなどという愛称で呼ばれるところが、幸せからは程遠そうだ。

 タイトル“昏い部屋”とは文字通りの意味ではなく、ジェインの記憶の空白部分を指す。ジェインもまた三人称語り手の一人であり、正直とは言えない。なぜならば、医師や警察に話した事とは別の内容を、密かに友人達に電話をして確認しているからだ。彼女には彼女だけが知っている秘密があるが、あいにく病気で思い出せないのか。それともふりをしているのか。後者ならばその理由は?

 後期作品から読み始めたからなのか、初期作品のウォルターズではヒロインが饒舌で、ロマンス要素が濃い。


ミネット・ウォルターズ作品
氷の家
女彫刻家
鉄の枷
囁く谺
蛇の形
遮断地区
病める狐
悪魔の羽根
カメレオンの影
養鶏場の殺人/火口箱
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2323 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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この書評へのコメント

  1. ef2021-04-16 05:26

    ミネット・ウォルターズ、良さそうですね。『鉄の枷』しか読んでいませんが(これは面白かった!)、もっと読もうかな。

  2. 星落秋風五丈原2021-04-16 05:32

    efさん、おはようございます。ミネット・ウォルターズは図書館にあるのはこれで全て読了しました。昔の本の方がロマンス要素が強かったです。後半になるにつれてメッセージ性が高くなった気がしました。

  3. No Image

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