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rodolfo1さん
rodolfo1
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ミュージシャンを目指して引き籠っていた宮路は、老健施設の慰問に出かけ、そこで天才サックスプレイヤーの渡部に出会う。渡部はその施設の介護士だった。渡部とバンドを組みたい宮路は、一緒に施設で演奏会を。。。
老健施設の慰問に来ていた宮路は、天才的なサックスの音を耳にしました。奏者は老健施設の職員渡部でした。宮路の歌とギターは全くうけませんでした。宮路は今年29歳、高校生の時に組んだバンドで音楽にはまり、以後も音楽活動を続けて来ましたが、大学卒業以後はすべてのメンバーに見放され、一人で活動していました。しかし音楽が金になった事は一度もありません。宮路の実家は金持ちで、音楽活動をすると宣言した宮路に毎月20万円の仕送りをしてくれました。

どうしても渡部のサックスをもう一度聞きたかった宮路は、老健施設を再訪し、施設に入り込みました。再び渡部がサックスを吹きました。渡部は、ウェイク・ミー・ウェン・セプテンバー・エンズをリクエストしました。大好きな曲だったのでした。しかし渡部は誰も知らないからと、ヘイ・ジュードを奏で、感動した宮路は歌で参加しましたが、後ろの婆さんに見えん、と怒鳴られ、杖で殴られました。

宮路を殴った婆さん水木が様子を見に来、気になるから来週また来いと言いました。宮路は高校時代を回想します。それまで級友と良い関係を築けたためしがありませんでしたが、バンドの話になって急にみんなが盛り上がりました。結局文化祭で演奏しましたが、毎日友達が家に来る素敵に楽しい時間だったのでした。

翌週老健施設を訪問した宮路を、水木はぼんくら呼ばわりします。面会用紙に、自分の息子、と書けと言い、以後それで通しました。その日は渡部の演奏はありませんでしたが、水木は宮部に自分の買物をして来いと言いつけました。宮路は言いつけられた買い物をこなし、可愛いハンドタオルを見繕いました。すると他の老人の買物も頼まれました。

宮路は無理やり渡部に頼み込み、サックスを吹いてもらいました。渡部は宮地が好きだと言ったウェイク・ミー・ウェン・セプテンバー・エンズを吹いてくれました。夏は終わる、無邪気なままではいられない、9月の終わりに起こしてくれ、という曲でした。宮路は渡部に、一緒にバンドを組もうと誘いましたが、渡部は乗って来ませんでした。

買物して老健施設を再訪した宮路に、一人の老人、本庄が声をかけて来ました。ウクレレを教えてくれと頼まれました。早速楽器店にウクレレを買いに行き、教則本も手に入れました。意外とウクレレは楽しい楽器だったのでした。宮路は渡部を食事に誘い、渡部は同行しました。2人は自分達の身の上を語りました。宮路は酔っぱらって渡部に家まで送ってもらいました。

ウクレレの練習をした宮路は、本庄にウクレレをレッスンします。意外や本庄はなかなか筋が良かったのでした。宮路は渡部に、老健施設で一緒に演奏しようと持ち掛け、2カ月後の演奏を決めました。漸く渡部も了承してくれました。演奏する曲を決める為に休日に集まる事になりました。渡部が公民館の練習場所を予約してくれ、おおまかな曲を決めました。

宮路はやや上達した本庄に、上を向いて歩こうを教えました。渡部との練習も進みます。渡部は宮路の陽気な声が良いと言ってくれました。しかしいよいよ上を向いて歩こうを通す日、本庄は別人に変化していました。宮路を攻撃します。認知症を発症していたのでした。宮路はショックで泣きました。しかし水木はこんな事は日常茶飯事だ、落ち込んでいる暇など無いと言い、新たな買い物を宮路に命じました。面白い小説を買って来いと言うのでした。宮路は1週間読書に励み、赤毛のアンと妄想銀行を水木に手渡しました。

翌週本庄は元に戻っていました。上を向いて歩こうを2人で通して弾きました。さらに本庄は、心の瞳という坂本九の歌をやりたいと願いました。二人でやろうと宮地は誓い、演奏会の曲を変えようと渡部に提案しました。心の瞳と上を向いて歩こうをやろうと言いました。しかし本庄さんは重傷病棟に移ってしまいました。それを悲しんで涙を流す宮路に、それは甘えだと渡部は言い切り、料簡の狭い宮部の心の中に踏み込んで、そこに閉じこもっていた宮部を引っ張り出しました。

渡部は、今回の演奏は老健施設のみんなの為の物で、宮路が感動したりうっとりしたりするためにやるのではないと言いました。宮部は音楽とは心を震わせたり、涙をあふれさせたりするものだと思っていました。しかし渡部は、単純に愉快で楽しくなるサックスを吹き、宮路にも、もっと客を笑わせろとけしかけました。宮路は誰かに心の中まで踏み込まれたのは初めてでした。東京ブギウギを歌いながら宮路は、なんでこんなに楽しいんだろうと訝り、渡部は、どんな状況の中にいても、明日やその先にすてきなことが待っている事を僕たちは知っているからだと答えました。実は宮路がいままでこだわってしがみついてきたものは音楽ではなく。。。

いよいよ演奏の日がやってきました。演奏は大成功だったのでした。渡部のサックスは宮路の音楽とは違い。。。それが実は宮路の求めていたものだったのでした。。。水木のばあさんはみんなで作ったペン立てを宮路にくれ、実に意外な一言を。。。実は水木は。。。

瀬尾先生の小説には独特の世界があり、それを好む読者も多い模様です。瀬尾作品4作目ですが、私にはこの小説は合いませんでした。過去の3作品とも、もう少し登場人物が葛藤していましたが、この小説ではその葛藤はごくわずかなものです。プロットもトリックもまあ存在しますが、あまりにも貧弱すぎて、正直この作品は失敗作ではないかとおもわれました。
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rodolfo1
rodolfo1 さん本が好き!1級(書評数:867 件)

こんにちは。ブクレコ難民です。今後はこちらでよろしくお願いいたします。

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