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DBさん
DB
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心の機敏をとらえた話
四つの短編集です。
最初は表題作のコキュ伯爵夫人の話ですが、タイトルだけでどんな話かだいたい予想がつきます。
主人公のコキュ伯爵夫人は十六の時に親子ほど年の離れたコキュ伯爵に嫁いで二十年。
立て続けに子供を産んで家事を取り仕切り、息子たちには仕事を見つけてやり娘たちは嫁に出してひと息ついたところだ。
明るいところで鏡を見て、年月と出産が自分の肌や身体の線に与えた影響を認識し激しい焦燥感にとらわれた。
放蕩者の夫は愛人のところへ通うため夫婦のベッドは冷えきっており、不倫の恋に身を任せようにも相手がいない。
だが都合よく地方三部会が開かれることになっていて、そこに出会いの期待をかけた夫人は精一杯のお洒落をする。
鉛のはいった白粉に辰砂の頬紅、これは別の意味で恐ろしい。
運良くスイス傭兵の青年を捕まえたが、逢引の夜に事件が起こる。
モーパッサンと真逆の女の一生ですが、そこまで開き直ればいいのかも。
中年女のしぶとさを感じて面白かった。

続く「令嬢アイセの秘事」は、タンサン夫人に引き取られていた美しいトルコ娘アイセの話です。
タンサン夫人はアイセを財産のある義兄に差し出して見返りに遺産を貰えることを期待していた。
彼女の望み通り以上に事は運んで財産を手に入れたが、トルコ娘が奴隷市に立つことになった原因を知り動揺する。
視点を変えれば話が違って見えるのは興味深いが、倒錯の度が過ぎていたかな。

「ダンフェル夫人の断頭台」は、恐怖政治真っ盛りのパリでの話です。
ジロンド派の弁護士ダンフェルは、結婚十七年目の冴えない男だった。
夫婦仲もマンネリ化し、ダンフェル夫人は小間物屋の経営に夢中だった。
そんなある日ジロンド派の幹部がダンフェル氏の浮気の話を持ってくる。
政治的に不利な要素は潰しておきたいという意向で、党としては不倫相手と別れて元鞘に収まるのでもいいし、離婚して浮気相手の十四歳の娘と結婚するのでもよしということだったが。
断固闘うことにしたダンフェル夫人のやり方が見ていて面白いし参考になる。
その闘志は立派だし冷静な観察力も見逃せないが、夫をすでに愛してないからできる行動だとも思った。
背後に見え隠れするシアン色の美青年が藤本作品らしさを出していました。

最後の「農夫ジャックの幸福」は、ジロンド狩りにあって逃亡中の若い男をジャックが匿った話です。
自分の土地を広げることだけを考えて人生を送ってきたが、人生の晩年になって大きな心境の変化があった。
その出会いとジャックの過去を語ります。
どの話もフランスが舞台だが、場所や時代が違っても変わらない人間の話だった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2027 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. 星落秋風五丈原2021-01-27 20:49

    DBさんこんばんは。ビブリアと中野京子と藤本ひとみとヴィクトル・ユーゴーのちゃんぽん読書って濃いなぁと拝見しております(笑)。『ブルボンの封印』から始まる一連の藤本ひとみさんの歴史ものは昔読みました。

  2. DB2021-01-27 21:06

    まさしくちゃんぽんですね(^^;)
    藤本ひとみは作品数が多いしばらつきも激しいので制覇は目指していませんが、もう何冊か読んでみようと思っています。

  3. No Image

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