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星落秋風五丈原
レビュアー:
重い想い重すぎる! 母と息子の骨肉の争い
 まずこの書誌情報を見てもらえばわかるが、892頁。持ち歩いて電車で読むわけにはいかない。寝っ転がって読むとしても、持ち上げると重い、重すぎる。

 メディシスとつくのでわかるだろうが、彼女はメディチ家の出身だ。同じフランス王妃となったカトリーヌ・ド・メディシスとは遠縁にあたる。表紙写真では二十顎だが、これが当時の美人の条件だったらしいので合格。もっと彼女を見たい人は(いるのか)ルーブル美術館に行くと、ピーテル・パウル・ルーベンスの二十四枚の連作『マリー・ド・メディシスの生涯』が見られるので是非見に行って欲しい。これだけ大画面で描かれるなんて、フランスにとってすごいことをした人?と思うが、要は金払いのいい客だっただけのこと。佞臣を受け容れ、言う事を聞いてもらうために金を払いまくったので、旦那が貯めた金庫が空になって軍隊を雇えなくなってしまったのは本当の話。政治能力はなかった。「女に政治は無理」という性差別で言うのではなく、育ってきた環境に拠るものだ。

 さて話が先走ったが、彼女の旦那はフランス王アンリ4世、息子の一人はルイ13世、太陽王14世のお父さんだ。だから彼女はルイ14世の祖母にあたる。だが副題にもある通り、母と息子の仲は最悪だった。その最悪っぷりが延々892頁に亘って書かれていたら萎えるが、確執が表面化するのはルイ13世が国王として統治し始めてからだ。アンリ4世は息子が幼い時に暗殺されたので、わずか8歳で即位はするものの、当初母親たるマリーが摂政として政権の中枢についた。しかしやがて成長した息子が自分で政治をやりたいと思うのは当然、一方母親は一度得た利権を手放したくない。そこへ優秀なリシュリューが現れ枢機卿となって国王とタッグを組む。さあ均衡は一気に国王の方へ傾く。後半はデュマが『三銃士』で描いた時代になる。更に宗教が親子をややこしくする。カトリーヌ・ド・メディシスの時代にも激しかったが、フランスは旧教と新教がぶつかる国だ。マリーは旧教側だが、夫アンリも息子ルイも特に新教を取り締まる気はない。遂にこの親子は母親を幽閉、追放と行く所まで行ってしまう。ただフランスという国のためには、彼女を排除して大正解。仲良しのルイ13世とリシュリューが相次いで亡くなっても、太陽王の時代が来るのだから。

 一点、締め切りが厳しかったのか一つ二つだけではない脱字があったので再版の際に修正願いたい。

 二人の確執をドラマで見たい人は『マスケティアーズ』をどうぞ。
マスケティアーズ
    • ルーベンス連作『マリー・ド・メディシスの生涯』より「マルセイユ上陸」
    • ドラマ「マスケティアーズ」のマリー・ド・メディシス
    • ドラマ「マスケティアーズ」のルイ13世
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2321 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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