morimoriさん
レビュアー:
▼
東大総長だった南原茂、彼がいなかったら戦後の日本はどうなっていたか。日本民族の償いを果たしてあまりある一生を送ったという。
 母に背負われた少年時代を思い出しつつ、心筋梗塞で意識を失った状態から目を覚ました南原茂。東大総長だったという南原は、いったいどんな人物だったのか。名前も知らない人物の話を読み始めて、正直後悔し始めていた。村木嵐氏の作品というだけで手に取ってしまった小説を、もてあましていた。途中内村鑑三や新渡戸稲造の姿は作品内に登場するも、主人公はよく知らない南原茂。
しかし、読み始めると5.15事件や2.26事件さらには戦中、戦後の混乱の中、東京帝大教授として反戦を目指しつつも、教え子たちを戦場に送る苦悩を抱きつつ戦争と対峙していった人物。それだけでなく、教育家委員会の長として教育に関する諸問題に取り組むなどの功績をあげたのだった。戦争前に、日本が敗戦するとわかっていて戦争を始めたことは知っていたが、その戦争を辞めさせるべく奮闘した学者が何人もいたことをこの小説を読んで初めて知った。さらに、爆弾投下後の広島、長崎では東大からだけで20人を超す医師が犠牲になったという。爆心地に入る危険を知りつつも、目の前の人を助けようとした医師たちがいたことを初めて知った。
日本で出版法違反に問われて、東大関係者の多くが有罪になったり大学を追われたりした事実をも初めて知った。軍国主義の日本を現在の日本から想像するだけで脅威だ。先人の苦悩があればこその、現在の平和で自由な日本が存在するのだと心の底から感謝の思いが湧き上がってくる。
青年よ。学徒よ。希望を持て。理想を見失うな。
読み終えてこの言葉が、ずんと心に残った。
しかし、読み始めると5.15事件や2.26事件さらには戦中、戦後の混乱の中、東京帝大教授として反戦を目指しつつも、教え子たちを戦場に送る苦悩を抱きつつ戦争と対峙していった人物。それだけでなく、教育家委員会の長として教育に関する諸問題に取り組むなどの功績をあげたのだった。戦争前に、日本が敗戦するとわかっていて戦争を始めたことは知っていたが、その戦争を辞めさせるべく奮闘した学者が何人もいたことをこの小説を読んで初めて知った。さらに、爆弾投下後の広島、長崎では東大からだけで20人を超す医師が犠牲になったという。爆心地に入る危険を知りつつも、目の前の人を助けようとした医師たちがいたことを初めて知った。
日本で出版法違反に問われて、東大関係者の多くが有罪になったり大学を追われたりした事実をも初めて知った。軍国主義の日本を現在の日本から想像するだけで脅威だ。先人の苦悩があればこその、現在の平和で自由な日本が存在するのだと心の底から感謝の思いが湧き上がってくる。
青年よ。学徒よ。希望を持て。理想を見失うな。
読み終えてこの言葉が、ずんと心に残った。
お気に入り度:







掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
多くの人のレビューを拝見して、読書の幅が広がっていくのが楽しみです。感動した本、おもしろかった本をレビューを通して伝えることができればと思っています。
この書評へのコメント
 - コメントするには、ログインしてください。 
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:潮出版社
- ページ数:0
- ISBN:9784267021664
- 発売日:2019年03月05日
- 価格:2090円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。
『夏の坂道』のカテゴリ
登録されているカテゴリはありません。






















