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DBさん
DB
レビュアー:
ローマ帝国を産んだ女の話
ウェルギリウスの叙事詩では、トロイアの陥落から逃れイタリアへと新たな国を求めて移住したアエネーアスの一族の話が語られる。
本作ではイタリアのラティウムの王であるラティーヌスの娘、アエネーアスに嫁いだラウィーニアを主人公にした物語だ。
ウェルギリウスの叙事詩ではわずか数行でしか語られず台詞もない女だった。
だがラテン人である王の娘でありトロイア人の王との間に息子を産んだラウィーニアが、後のローマ帝国の始祖となるアエネーアスにとって重要だったのは間違いない。

ラウィーニアの少女時代の思い出は二人の幼い弟たちが熱病で死んでしまったことから始まります。
それまでは三人の子供に笑顔を見せる優しい母親だったが、弟たちが死んで生き残った娘ということでラウィーニアを責めるようになる。
過保護になるというのならまだわかるが、息子を失った悲しみを娘にぶつける母親は未熟だったのだろう。
女たちが住む場所で発作のように起こる母の怒りを恐れ、内気で思慮深い少女へとラウィーニアは育っていった。

ラウィーニアが少女から乙女へと成長すると、周りの国々から男たちが求婚しに来るようになった。
中でも母親の母国であるルトゥリアからきた母親の甥にあたるトゥルヌス王は熱心にラウィーニアを狙っている。
母親の強い勧めもあったが、ラウィーニアはまだ結婚というものに前向きになれないせいなのか押しが強い従兄弟を好きになれなかったようだ。

アルブネアの聖なる森は先祖の霊や森と泉の神々と交流する儀式のために父に連れられたラウィーニアが時折訪れる場所だったが、そこではるか先の時代のウェルギリウスと交流した。
そこでラウィーニアは自分の夫となる運命のトロイア人が船でやってくること、アエネーアスはイタリアに根を下ろすも三つの夏と三つの冬しか時間が残されていないことを聞かされます。
三年という短い間しかないとわかっていても、ラウィーニアはアエネーアスと愛し合い息子を産んだ。

息子の中にアエネーアスの面影を見ながら、アエネーアスの先妻の息子アスカニウスとの軋轢に苦労を重ねる。
だが逞しく成長した息子が王として安定した王国を支配するようになり、ラウィーニアは夫の眠る街で静かな余生を過ごす。
詩人がわずか数行で語った乙女の人生の重みを感じさせる話だった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2049 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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