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はなとゆめ+猫の本棚
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人生は前に進むか、後ろをふりかえるしかない。でも、カニのように横歩きをして人生をみてみたら?
 2021年本屋大賞2位の作品。

 5-6年前市の方針か、もっと上の県の方針かわからないが、地区の公民館の名称がすべてコミュニティセンター通称コミセンに変わった。この物語では、コミュニティハウスになっている。ひょっとしたら国の方針かもしれない。もはや公民館という呼称は消えた。

 この作品は、街で運営しているコミュニティハウスに小さな図書館があり、そこで司書をしている小町さんが、悩みや生活に苦しんでいて図書館にやってきた人に、謎のつぶやきとともに、読んだらとおもう本を推薦、それに可愛い付録をつけて人生を後押しするというハートウォーミング小説集である。  5つの作品が収録されている。

 井上陽水が「今年父は65」「そして母は64」と歌い、「人生が二度あれば」と嘆き唄う。
50年以上も前の唄。この時代は人生65歳になれば老年で最後をむかえるばかりという状態。今はまったく違って、人生は2度ある状態。65を過ぎてから死ぬまで40年近くある状況に変わった。

 主人公の正雄も65になり会社を定年退職した。会社にいる間は、前に向かって進む。まれに後ろを振り向く。

 正雄が定年退職して、妻とスーパーに夕食の食材を買いにゆく。そこで売られているサワガニを見る。そして正雄は思う。自分は今まで、人生は前を見るか、後ろを見るかしかしなかった。しかしサワガニは横に歩き風景を見ている。横に歩むと風景はどういうふうに見えるだろうかと。

 私は会社を退職して、しばらくすると町内の自治会長をさせられた。一人ぐらしや、年老いた人の家を訪問して、愚痴や悩みを聞いたり、幼稚園や小中学校の入園、入学、卒園、卒業式に来賓で出席したり、各家庭を訪問して、お祝いも述べた。いろんな行事も企画実行し町の人たちと交流して、街の風景に溶け込むよう懸命に務めた。人生がかにの横歩きで見る風景に変わった。自治会長の後、町内の代表で地区の理事に押し上げられた。そして、その後自治会連合組織の会長をするように説得されたが、それは堪忍してと断った。

 今は、町内の神社の総代代表をやらされ、祭りや行事で多忙な日々を送っている。会社一本道で走るのも悪くはないが、かにの横歩きでみえる風景もなかなか良いものだ。

 収録されている「正雄 65歳」から連想した感想である。


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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6225 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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