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休蔵さん
休蔵
レビュアー:
刻々と変化する新型コロナウイルスをめぐる状況。その時々に提言をしている人がいる。それをきちんと読んでおきたい。本書はユヴァル・ノア・ハラリによるもの。
 未知のウイルスによる感染が確認され、そこから世界の日常は一変した。
 新型コロナウイルスによるパンデミック。
 本書は『サピエンス全史』や『ホモデウス』で人類史を取り扱ってきた著者が、この危機に対しての考えを表明したもの。
 本書は2020年10月に刊行された1冊で、日本の感染状況で言うと第二波から第三波の間の刊行か。
 
 著者はウイルスへの対応のあり方を静かに見つめる。
 大切な考え方として2つ。
 ①国境の恒久的な閉鎖によって自国を守ることは不可能である。
 例えば、感染が小規模な範囲で確認された場合、その地点を厳格に隔離することで感染拡大を抑えることは可能かもしれない。
 しかし、ことがパンデミックということになった今、自国の国境を厳格に防いだところで、時すでに遅しといったところ。
 そもそも、現代社会における経済活動を含めた様々な行動において、完全に自国内での対応は不可能。
 特に、資源に乏しい国において、このことは自明である。

 
 ②安全確保は信頼のおける科学的情報の共有とグローバルな団結による。
 新型コロナウイルスについては、さまざまな言説が飛び交ってきた。
 マスクの性能に関するスーパーコンピューターの解析結果は、まさしく信頼のおける科学的情報と言え、その共有が重要であることは言うまでもない。
 しかし、共有し、団結することが大切である。
 自分の思う対策を講じない人を分断することは、最終的な収束を遅らせることに繋がると思う。
 グローバルな団結もそうだが、国内的な団結も必要だろう。
 経済優先か、収束を目指した自粛の徹底を求めるべきか、二律背反的な姿勢では事が収束しないと容易に理解できるはず。

 ただ、高度なテクノロジーを使用した人々の追跡、監視、操作への危惧が懸念されるという。
 マスクの着用の有無については相互監視のような様相を呈したこともあり、さらにはマスクの種類に対しても厳しい意見が飛ぶようになった。
 事が民間の話であれば、残念なことには違いはないが、まだマシかもしれない。
 しかし、事が民間の話で済まなくなった場合はどうだろうか。
 例えば、時短を要請していたはずが、いつのまにやら応じない店への厳粛な対応へと議論が展開するようになった。
 この種の議論の膨張が懸念されるところで、さらに高度なテクノロジーの活用のあり方には怖さが伴う。
 そう言えば、スマホの位置情報の共有は、もはや当たり前となった。

 新型コロナウイルスの収束を願う気持ちは、世界中で共通しているはず。
 進みたい道は1つのはずなのに、多くの考え方がその方向性に多様性を帯びさせる。
 最初は感染者数2桁でもビビっていたが、いつの間にやら4桁でも普通に受け入れている自分がいる。
 様々な考え方に加えて慣れという人間の特性も絡み、事態の完全収束は未だ見えない。
 いま改めてこの事態との向き合い方について、考えてみるべきだと思う。
 本書はそのために活用できる最適なテキストの1冊である。
 
 
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:451 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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