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かもめ通信
レビュアー:
久々にシェトランドに行ってきた。
イングランド本島とノルウェーを橋渡しするかのように北海の北辺に浮かぶ
シェトランド諸島を舞台に繰り広げられてきたこのミステリシリーズも7作目。
すっかりお馴染みとなったシェトランドを久々に訪れた。

あの美しく厳しい自然はそのままだろうか。
あの人たちはどうしているだろう。
今回もまた以前と同じように、迎え入れてくれるだろうか
そんなことを考えながらページをめくると
いきなり登場したのは埋葬シーンだった。

棺の中に横たわるのはマグナス・テイト。
シリーズ1作目『大鴉の啼く冬』以来、
印象的な役どころを担ってきたシェトランドの“顔”の一つだ。

歳を重ねればいつか、
土に帰る日が来るものだとはわかっていたけれど…
と、シェトランドで共に過ごした数々のシーンを思い起こす。

そんなふうに、気がつけば私もまた、島に足を踏み入れていた。

ところがそんな会葬者の目の前で、
降り続いた長雨のために緩んだ地盤が地滑りを起こす。
土砂が直撃した空き家で見つかったのは
赤いドレスに身を包んだ身元不明の女性の遺体。
その女性、検視の結果,地滑りの前に殺されていたことが明らかに。

誰も彼もが知り合いで、
たとえ顔見知りでなかったとしてもあの人なら誰それの親戚筋だとすぐわかる
そんな狭いコミュニティのはずなのに
被害者の身元はなかなか判明しなかった。

いったいあなたはなにものなのか?
それは被害者だけでなく、
他の登場人物たちにも繰り返し向けられることになる問いだ。

よく知られている人物が別の顔を持っていたのか?
気心の知れたはずの相手でさえも心の内はわからない。
誰もが疑心暗鬼に。

けれども、シリーズ7作目ともなれば、
未だ心の傷を癒やすことが出来ないペレス警部はもちろん
ついついハッパをかけたくなってしまうサンディ刑事に
どんな現場からも何か見つけ出すヒューイット検査官など
心から信頼できるあの人この人がいるわけで、
いつもながらのミスリードにも、安心して身を任せ
真犯人を追い詰める。

ああ今回は、そうきたか……。

次回はいよいよ最終章。
ペレス警部の幸せを願ってはいるのだけれど、
幸せって必ずしも人生を
異性と共に歩むことではないような気も。
だがしかしこれからも
シェトランドと共に歩んでいくというならまあ、野暮はいうまい。



★関連レビュー
<シェトランド四重奏:The Four Seasons Quartet>
大鴉の啼く冬/原題:Raven Black (2006)
白夜に惑う夏/原題:White Nights (2008)
野兎を悼む春/原題:Red Bones (2009)
青雷の光る秋/原題:Blue Lightning (2010)

<新シリーズ:The Four Elements Quartet>
水の葬送/原題:Dead Water (2013)
空の幻像/原題:Thin Air (2014)
●地の告発/原題:Cold Earth(2016)
●未邦訳/原題:Wind Fire(2018)
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2234 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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