書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
ジュニア叢書のミス・マープルは、白髪断髪。若い!(挿し絵が)
先に読んだアガサ・クリスティー文庫の『予告殺人(新訳版)』と本文は同じものだった。(『予告殺人(新訳版)』の感想はこちらに書いています。)

新聞の個人広告でお知らせされた殺人が、ゲームでもイタズラでもなく、期日と時間を守ってきっちりと実行されるところから始まる物語だ。
酷い殺人の物語であるけれど、散りばめられたユーモアや茶目っ気が楽しい。
まずは、牧師夫人の歌う替え歌を聞きたい。
「今日は晴れた殺人日和 五月のようにうららかな日
 ……
 今日はみんな出かける 殺人に!」
また、ミス・マープルをはじめ、好奇心旺盛で、何があってもくじけないように見える老嬢たち(小さな村の、小さなお付き合いのなかに、よくもまあ集まったものです)があっぱれで、彼女たちを見ていると元気がもりもり湧いてくる。

この本は、文庫よりも大きめの本で、ふんだんな楽しい挿絵が盛り込まれている。
これは、若い人たちのための叢書「ハヤカワ・ジュニア・ミステリ」の一冊なのだ。
この本なら、たぶん小学生でも楽しめると思う。ここから、アガサ・クリスティー文庫に手を伸ばす子も現れるだろう。

楽しい一冊だけれど、実は、一番気になったのが、挿絵なのだ。挿絵の力って大きいと思う。
表紙の絵を見てくださいな。この断髪の現代的な女性が、ミス・マープルだという。
ミス・マープルだけではなく、ほぼすべての人物(大半は老人であるが)がとても若々しく描かれている。
この本を手に取る若い読者たちが登場人物により親近感を持てるように、との配慮だろうか。

この本にはミス・マープルの容姿についてはほとんど書かれていなかったと思うが、この間読んだ『火曜クラブ』(ミス・マープル初登場の短編集)には、「腰のまわりをぐっとつめた黒いブロケードの服を着ていた」「手には黒いレースの指なし手袋をはめ、雪白の髪を高々と結い上げた上に黒いレースのキャップをのせている」「うす青いやさしそうな目」と書かれている。
人の好さそうなお婆さんが、実は名探偵というのが、思いがけなくて面白いと、わたしは思ったのだけれど……。
同じ本を読みながら、心寄せる登場人物を、それぞれまったく違う姿に思い描いているかもしれないと思えば、それもおもしろい。かな。

掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1737 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

読んで楽しい:7票
参考になる:23票
共感した:1票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. 星落秋風五丈原2020-12-26 16:54

    ぱせりさん、こんばんは。何だかイラストのミス・マープルが若いですね(笑)

  2. ぱせり2020-12-26 17:01

    星落さん、こんにちは。
    ほんと、なんだか若いですよね(笑)

  3. ef2020-12-26 18:41

    表紙絵のマープルに笑。
    若いも若い。
    っつかダメだよね~これ。
    年相応に描いても魅力的なおばあちゃんは沢山いるというのに。

  4. ぱせり2020-12-26 19:23

    efさん、やっぱりダメですねえ。
    この本で初めてミスマープルに出会う子もいるんだろうなあ、その後、文庫のマープルに手を出したとき、どう感じるだろうかなあ、と思います。
    挿画家さん始め、関係の方々に、絵の理由(意図?)をおききしたい気分です(^^;

  5. ef2020-12-26 20:40

    そそ。何でもない近所のおばあちゃんが名探偵というところがマープルの魅力の一つなんだから、そこはちゃんと描かなきゃですよね。
    子供たちへの影響もおっしゃる通り。
    みんな、早く本物のマープルに会いに行くんだ。
    きっと、そっちの方が数段魅力的なんだから。

  6. ぱせり2020-12-26 21:01

    そうだ、早く本物のマープルに会いにいくんだ!(^o^)/

  7. ef2020-12-26 21:46

    話はそれますが、子供の頃、どんな本を読めたか(出会えたか)というのは結構大きいですよね。
    私は、ジュヴナイルで明智小五郎、シャーロック・ホームズ、アルセーヌ・ルパン、なんと!エラリー・クイーンなんかとお友達になりました(笑)。
    結構、普通の文庫に移行したのが早くて、小5の時、創元推理文庫の『オリエント急行殺人事件』を買って読んで以来、ずっと文庫になりました。

    いや、初めて『オリエント』を買いに行った時、本屋のおじさんから、「これ、君にはむずかしいと思うけど大丈夫?」と聞かれて、「大丈夫です!」って真剣に答えたことを今でも鮮明に覚えています。
    そうして、大事に買って来た文庫を読んだら……!!!
    すっげー!
    これでハマりましたとさ。

  8. ぱせり2020-12-27 04:11

    efさん、おはようございます。
    子どもの頃に出会えた本、ほんとに大事ですよね。
    もしかしたら、子どもの頃が一番読書が楽しかったかも、と思ったりしますもの。
    それにしても、小5で文庫とは早い! そしてefさんの「すっげー!」いいなあ(^o^)
    けど、きっとそういう子、いると思いますよね。本が好きで、好きな分野がみつかったら、どんどん掘り進めていきたいと思う。そういう子なら、きっとそうなると思う。
    だから、その入り口になるかもしれない本は、読者がその先へどんどん進んでいくことを考えてほしいですね。(考えているのだろうけど、こちらが考えているのと違った)
    最初に出会った挿し絵のイメージ、あとあとまで残りますよねえ。

  9. ef2020-12-27 04:32

    あったかいコメントありがとうございます。
    ぱせりさん、FBやられていますか?
    私のところで、『自分が勝手に推す名探偵ランキング』を只今開催中。
    遊びに来てくれたらうれしいなあ(絵布海でやってますので、友達申請してくれたらご案内します)。

  10. ぱせり2020-12-27 04:54

    efさん、うう、魅力的なお誘いですー。でも、FBはやっていないのです。手を出すと管理できなくなりそうで(^^; とっても心残りですが……残念です。

  11. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『ミス・マープルの名推理 予告殺人』のカテゴリ

登録されているカテゴリはありません。

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ