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かもめ通信
レビュアー:
どうやら文学も「進化」するものらしい。わかったような気になってなにかを語りたくはないが、おそらく何も言う必要はないのだ。ただただ圧倒されたということ以外には。
数えてみたことはないけれど、我が家にはそれなりの数の本がある。
不本意ながら、所々前後二段になっているところもあるけれど、基本、本は本棚に立てて並べ、床などに積み上げることはしない。
そうはいっても、毎月毎月、新しい本がやってくるので、数を調整するために周期的に間引きをせざるを得ない。
毎度のことながら、どの本を残し、どの本を処分するのかはとても悩ましい問題だ。

この本に収録されている「何も言う必要がない」の中にも、語り手の“私”が、本を間引く基準について語っている場面がある。

基準は一つだ。二度読みたいか?簡単な質問だが、答えに至る過程はそれほど簡単ではない。
ある年は生き残った本が翌年には未練なく捨てられることもあるし……。

いつか私が私の本立てに立てる物語を一つ、完成させることができるだろうか。
そう、“私”は書く人だ。
書きかけの作品は幾つもあるが、最後まで書き上げたことはない。
だがしかし、少なくても書こうとする人なのだ。

「d」と「何も言う必要がない」という二つの作品が収録されているこの本を、私は図書館で借りた。

著者の作品はこれまで読んだことがなかったが、表紙に描かれた鮮やかな傘が気に入ったし、翻訳が齋籐真理子さんなら間違いはないだろうと思ったから。
なにより……大きな声ではいえないが……図書館の本なら、あわなければ途中で辞めて、返却してしまうことが出来るしね。

そう思って読み始めた直後、(いやこれはダメだ。私には斬新すぎる。)と本を閉じた。
主人公の名前はd、傘が結んだ縁で同棲を始めた相手の名前がdd、それだけでも目が点になりそうなのに、この出だしには……ついていけそうにない。

数頁で諦めて早々に返却しようと思っていたのだが、数日後、(返す前にもう少しだけ…)と思って、再び頁をめくったら……捕まった。

この本については「何も言う必要がない」。

好きな人はめちゃくちゃ好きだろうけれど、頁をめくる手が次第に重くなって途中で辞めてしまう人もいるにちがいない。

でもこれ、間違いなくすごい本だ。
たぶん、傑作なのではないかと思う。
私はきっとこの先何度も、この本の頁をめくることになるだろう。
どうやらうちの本棚に迎え入れるスペースをつくらねばならないようだ。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2234 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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