かもめ通信さん
レビュアー:
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カラフルな装丁と明るいタイトルに騙されるな!ゾクッとダークな大人の味わい!!
サンクリストバルで命を落とした三十二人の子どもたちのことをたずねられたとき、相手の年齢によって私の答えは変わる
こんな不穏な滑り出しで始まる物語は、ジャングルと川をかかえる亜熱帯の町サンクリストバルを舞台にしている。
1995年1月、その町で32人の子どもたちが亡くなるという衝撃的な事件が起きた。
事件から22年後、当時、町で社会福祉課の職員として働いていたがために、一連の事件に翻弄された男性が、事件の背景や人々の心情をクロニクル形式で書き連ねたのが本書である。
その子どもたちが、どこからきて、いつ頃から町に入り込んでいたのか、特定することは困難だったようだ。
当時も今もいろいろな説がとびかったが、初めのうち、先住民族ニェエの子どもたちに紛れていたのだろうという説が最もありそうにおもわれた。
つまるところ、ニェエの子どもが町の交差点で信号待ちの車に近づいて、野生のランや檸檬を売る姿は見慣れた光景であったし、その子どもたちが、泥だらけの顔をしていたり、ボロをまとっているのまた、ごくごくありふれたことであったから。
けれども、町の人々はやがて、気づき始める。
その子どもたちがみな、聞き慣れない言葉を話していることに。
やがて路上で人を襲いはじめ、スーパーを襲撃するにいたって、人々はようやく、子どもたちの存在を無視することができなくなったのだった。
つかまえようと思っても、不意に現れて夜の夜になると忽然と姿を消す。
いつ、どこから彼らはやってきたのか、いったい誰なのか、知っている大人はいなかった。
そしてまた、一人、二人と、今度は町の子どもたちが姿を消し始める。
カラフルな装丁と、きらきら光るタイトルにすっかり騙されて、読み始めたら、なんとも風変わりなサスペンスだった!?
まさかこれ、本当にあったことではないよね?
実際の事件をもとにしているとか?
などと、思わず考えてしまうほど、妙にリアルなのは、22年経ったといいながらも未だ思い出すたびに感じずにいれらない語り手の動揺が伝わってくるかのような筆運び故か。
いやそれだけではないだろう。
差別や貧困や社会的不平等といった、人が思わず目を背けてしまいがちなあれこれが、鮮やかに描かれているせいかもしれない。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- ページ数:0
- ISBN:9784488011055
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