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darklyさん
darkly
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「あんこう」のように無駄なところがまるでなく面白さがギュッと詰まった小説です。
プリンストン大学の地下金庫からスコット・フィッツジェラルドの5つの長編の原稿が盗まれた!「楽園のこちら側」「美しく呪われしもの」「夜はやさし」「ラスト・タイクーン」そして最も価値が高い「グレート・ギャツビー」である。

FBIは迅速かつ的確な捜査を行い窃盗団の内2人を逮捕したが窃盗団はプロ集団であり窃盗団の残り及び原稿は行方知れずとなった。当然原稿には多額の保険が掛けられており、保険会社は原稿を取り戻すべく民間の情報会社に捜査を依頼する。ハイテクを駆使しあらゆる分野で人的にもプロフェッショナルを揃えているその会社はFBIですら掴めなかった原稿の在りかの情報を掴む。しかし本当にそこにあるかを確かめるのは困難を極める。

その在りかとは頭脳明晰で用意周到かつ努力を惜しまず働き独立系書店経営で成功した、また社交家で名うてのプレーボーイであるブルース・ケーブルの経営する書店の地下である。情報会社のチームリーダーのイレイン・シェルビーはケーブルの書店がある島にゆかりがあり奨学金返済で困窮している作家マーサーに報酬と引き換えにケーブルに近づき内偵するように依頼する。

なぜなら本も作家も女性も大好きなケーブルは作家のサイン会やパーティも頻繁に開いており、作家であり女性としても魅力的なマーサーに目を付けないわけがないからである。目論見通りケーブルはマーサーを気に入り二人は親密になったが、果たしてマーサーは原稿を見つけることができるのか?そして原稿をプリンストン大学は無傷で取り返すことができるのか?

ジョン・グリシャムの冗長な表現を極力削ぎ落したような端正な文章と村上春樹のリズミカルで自然な日本語、昨今の厳しい書店経営におけるサクセスストーリー、稀覯本マーケット、華やかな作家たちのコミュニティ、スパイ小説さながらの情報戦、何一つとってもケチをつけることができません。

確かにメインプロットは原稿の行方捜索なのですが、マーサーやケーブル、ケーブルのパートナーのノエルなど魅力的なキャラクターばかりで、おしゃれで、アメリカ的で、サブプロットだけで読んでいて楽しくて仕方ありませんでした。対決に向かわざるを得ない運命にあるマーサーとケーブルですが、その時が来ないでくれと祈りながら読むという少し倒錯した心持ちがしました。

もちろんメインプロットも一筋縄ではいきません。イレインのチームとケーブルの頭脳戦、キツネとタヌキの化かし合い、FBIは完全にマヌケ役です。一方で多分大方の人が予想する結末ではないと思います。しかし、弁護士として現実を冷徹に見つめてきたグリシャムらしい、ある意味リアリティ溢れる結末だろうと思います。
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darkly
darkly さん本が好き!1級(書評数:337 件)

昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。

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