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efさん
ef
レビュアー:
好きだからと言って自分で書けるというわけではない
 図書館で偶然見つけて借りて来た本です。
 『図書室』、『図書館』とか、『古書』なんていうワードに弱いもので、内容はまったく知りませんでしたが、ひとつ借りて読んでみようかと思ったのです。

 本書には表題作の中編の他、3つの短編が収録されています。
 ここでは表題作をご紹介しましょう。

 主人公のジャックは、学生時代からの旧友で、貴族の出のサイモンにその自宅に招かれます。
 広壮で歴史のある屋敷で、かつては僧院だった建物に建て増しがなされたということです。
 サイモンの説明によると、この屋敷の図書室は本来もっと広かったのだけれど、ある時狭く区切られてしまったのだそうです。
 それを元の形に戻す工事をすることにしたそうなのですが、その機会に図書室蔵書の整理もしようと考え、その手伝いをしてもらうためにジャックを呼んだと言います。

 そして、実はこの工事に乗り気だった妻のジニーが不思議な手記を残して亡くなったとも知らされます。
 そのせいでしょうか、サイモンはすっかりやつれていたのです。
 サイモンの妻が残したという手記を読んだところ、ジニーは壁を取り払った図書室の奥で騎士を見たと書いているのです。
 幽霊?

 サイモンは、ジャックに、事の真偽を確かめたいので図書室で一緒に寝ずの番をして欲しいと頼んできます。
 気乗りはしないものの、友人の頼みを断ることもできずこれに応ずるジャックです。
 さて、寝ずの番を始めたのは良いのですが、ジャックはうっかり眠ってしまったようです。
 「あれを見たか!」とサイモンに起こされてしまったのですが、サイモンも騎士を見たと言うのです。
 騎士が出たという辺りを探してみたところ、一冊の古い手記のようなものが発見されました。
 それはラテン語で書かれていましたが、サイモンはラテン語は読めないので何とか解読してみてくれないかと言うのでこれを引き受け、以後、ジャックはこの手記の解読に没頭するようになります。

 そして、どうやら過去にこの屋敷で、傷ついた騎士を殺してそのお宝を奪ったという事件があったらしいことが判明します。
 図書室に出る騎士の幽霊とはこのことなのか!
 そしてまた、手記には暗号めいた仕掛けがあることにも気付き、その解読にも成功し……

 という作品なのですが……。
 う~ん……、良く言えば伝統的な幽霊、怪奇譚。
 悪く言えば何のヒネリもない陳腐な作品で、2017年にこの程度の作品を敢えて世に出すかねぇという感想です。
 作中の暗号もかなりレベルが低く、どうしてそう読むのよという辺りのこじつけ感が強いのです。
 作中人物の動機や行動も納得し難く、はっきり言って駄作でしょう(プロットが下手過ぎます)。
 同時収録されている他の3作も同じような程度の作品で、敢えて本書を読む理由を見出せませんでした。

 作者はポオをはじめとするミステリや怪奇譚の研究者で、研究書も二冊出しているのだそうです。
 作者の研究の成果は不知ですが、この手のジャンルがお好きなのでしょう。
 で、好きが高じて自分でも書いてみたということなのかもしれませんが、どうにも頂けない作品です。
 研究者としてはあるいは優れているのかもしれませんが、だからと言って小説が書けることとは別でしょう。
 私も好きなジャンルなのですが、好きなだけに評価は厳しくなりがちでもあり、本書については申し訳ないのですがあまり評価できなかったのだなぁ。


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ef
ef さん本が好き!1級(書評数:4905 件)

幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!

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この書評へのコメント

  1. noel2021-09-21 15:14

    >研究者としてはあるいは優れているのかもしれませんが、だからと言って小説が書けることとは別でしょう。

    確かに同感ですが、この『本が好き!』のレビュアーのなかにも、なにか書けばいいものが書けるひとなんじゃないかと思わせる人が何人かいます。敢えて名前は出しませんが、皆さんも思い当たる人が一人や二人はいるんじゃないでしょうか。

  2. No Image

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