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紅い芥子粒
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致死率100パーセントの感染症、白い病。しかし、国民はもっと深刻な病に感染していたらしい。それは、戦争への熱狂という病。
久しぶりに行った本屋さんで、平積みにされているのをみつけた。
時節柄、「病」の文字にひかれる。それが、感染症であればなおさら。

戯曲である。三幕で構成されている。

こんな物語。

世界中で、謎の病が流行っている。
皮膚に白い斑点が出たかと思うと、たちまちひろがり、耐えがたい腐臭を放つようになり、やがて死んでしまう。
人から人へ感染するが、なぜか若い人はかからない。
45歳ぐらいから要注意で、50歳以上の男女は必ず感染して死に至る。

舞台となっているのは、ヨーロッパの架空の小国で、独裁国家らしい。
世界戦争の前夜を思わせる情勢、そこへ白い病のパンデミック。
独裁者の元帥は、着々と戦争の準備を進めている。

元帥は勇気(無謀ともいう)ある人で、危険を承知で感染者と握手し、案の定感染してしまう。
独裁者だから、元帥に代われる人はいない。元帥は、死んではならない。
戦争を始め、国家を勝利に導くまでは。

ここにひとり、白い病の特効薬を開発した医師がいる。
彼は、貧しい人だけを診る町医者で平和主義者だ。
じっさいに特効薬で貧しい人を治療し、成果を上げている。
しかし、金持ちは診ない。絶対に。金や権力がある人は、自分で何とかできるからというのが彼の持論。

町医者は、元帥の治療と特効薬の情報開示に条件を出す。
世界中の国と平和条約を結ぶこと。恒久平和を誓った国にだけ、特効薬を開示すること。
元帥は、周囲に説得される形で、その条件をのんだ。
戦争を始めても、元帥が途中で死んでしまったら、勝利に導く人がいなくなるから。戦争を終わらせる人もいなくなるから。元帥は独裁者で、後継者の養成もしていなかったのだ。

町医者は、特効薬の入ったカバンを持って、元帥のもとへ急ぐ。
その途中、民衆のデモに巻き込まれる。
「戦争万歳万歳!」「元帥万歳万歳!」と叫ぶデモ隊に。
はたして、町医者は、元帥のもとへたどり着くことができるのか……

国民は、白い病よりも、もっと深刻な病に感染していたらしい。
老いも若きも。それは、戦争への熱狂という病。
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紅い芥子粒
紅い芥子粒 さん本が好き!1級(書評数:560 件)

読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。

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この書評へのコメント

  1. noel2021-02-15 10:10

    国民は、白い病よりも、もっと深刻な病に感染していたらしい。

    怖いですね。いまは、元総理バッシングに躍起になっていますが……。

  2. No Image

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