ことなみさん
レビュアー:
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この作品から「推し」が日常語になった?
耳からも目からも入ってくる言葉「推し」を抵抗なく使うようになった。それまで使っていた「ファン」とか「追っかけ」にすんなり入れ替わってしまった。
まぁ「ファン」は軽くて「好き」の代用にもなるが「追っかけ」は推しのための資本投入という少し重いテコ入れが想像できるけれど。
私にも一時的だが推す作家や歌手や俳優やスポーツ選手ができる。だれが何を推してもいいし引いてもいいと思っているが、自分の持続性のないところを晒すこともないとそんな気配はできるだけ隠している。
この主人公のあかりという高校生は全身全霊を捧げて、アイドルグループまざま座(このネーミングおしゃれ)の上野真幸を推している。
現実は落ちこぼれすれすれで家族に見捨てられそうになり、事実高校では二年生に進学できず中退、家族とも別れてますます押し一筋の暮らしに落ち込む。
題名の「推し、燃ゆ」は押しに燃えたのではない。全霊を傾けている押しが燃えてファンを殴ったのだ。炎上したのだ。
解散して舞台を下りた押しを諦めないあかりはぼろぼろになり、それでも一目会いたいと住居を探しにいく。何もかも犠牲にしてアルバイトで得た給料でアルバムやグッズを買ってきた。トップアイドルに押しあげることだけを望んできた。その推しが望んでただの人になった。
なんとなく作り話には思えない、形は変わってもなにかをひたすら推すとしたら現実はこうかもしれないと思う。何かを推したり、何かを望んだり、強い思いに支配されもう推すしかないと覚悟を決めたりすれば。
あかりは本体をなくした無数の推す人のひとりになる。あかりはそんな自分を知っている。
あかりは推しの家らしいところから帰ってもう自分を支えているのは背骨だけだと思いながら倒れ込む。
一途に憑かれて生きているあかりの閉ざされた暮らしに開いた小さな窓が、同士が集まるSNSであり、完璧な推し分析のブログだったりする。素晴らしい熱量がこもったブログを書いているときはあかりも燃えていた。
若い作者が若い世代を書き、あかりの傷ついた心は若い人には共感を、振り返る年代には若い頃に失った一途さを思い出させる
164回芥川賞受賞作でベストセラー。ここまで推してきた作者のデビュー作も読んでみた。
まぁ「ファン」は軽くて「好き」の代用にもなるが「追っかけ」は推しのための資本投入という少し重いテコ入れが想像できるけれど。
私にも一時的だが推す作家や歌手や俳優やスポーツ選手ができる。だれが何を推してもいいし引いてもいいと思っているが、自分の持続性のないところを晒すこともないとそんな気配はできるだけ隠している。
この主人公のあかりという高校生は全身全霊を捧げて、アイドルグループまざま座(このネーミングおしゃれ)の上野真幸を推している。
現実は落ちこぼれすれすれで家族に見捨てられそうになり、事実高校では二年生に進学できず中退、家族とも別れてますます押し一筋の暮らしに落ち込む。
題名の「推し、燃ゆ」は押しに燃えたのではない。全霊を傾けている押しが燃えてファンを殴ったのだ。炎上したのだ。
解散して舞台を下りた押しを諦めないあかりはぼろぼろになり、それでも一目会いたいと住居を探しにいく。何もかも犠牲にしてアルバイトで得た給料でアルバムやグッズを買ってきた。トップアイドルに押しあげることだけを望んできた。その推しが望んでただの人になった。
なんとなく作り話には思えない、形は変わってもなにかをひたすら推すとしたら現実はこうかもしれないと思う。何かを推したり、何かを望んだり、強い思いに支配されもう推すしかないと覚悟を決めたりすれば。
あかりは本体をなくした無数の推す人のひとりになる。あかりはそんな自分を知っている。
あかりは推しの家らしいところから帰ってもう自分を支えているのは背骨だけだと思いながら倒れ込む。
一途に憑かれて生きているあかりの閉ざされた暮らしに開いた小さな窓が、同士が集まるSNSであり、完璧な推し分析のブログだったりする。素晴らしい熱量がこもったブログを書いているときはあかりも燃えていた。
若い作者が若い世代を書き、あかりの傷ついた心は若い人には共感を、振り返る年代には若い頃に失った一途さを思い出させる
164回芥川賞受賞作でベストセラー。ここまで推してきた作者のデビュー作も読んでみた。
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徹夜してでも読みたいという本に出会えるように、網を広げています。
たくさんのいい本に出合えますよう。
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- 出版社:河出書房新社
- ページ数:0
- ISBN:9784309029160
- 発売日:2020年09月10日
- 価格:1540円
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