darklyさん
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「皆勤の徒」デビューした酉島伝法さんの初短編集。「皆勤の徒」を読んで数ページで挫折した方も多いかと思いますが、最後まで読まれた方にはお薦めします。
「皆勤の徒」でぶっ飛んだSFを書いた酉島伝法さんの短編集。本としては3作目になります。2作目の長編「宿借りの星」は未読です。酉島SFの特徴は何と言っても異様な世界観と当て字の造語。何が何だか分からないまでも読み進めて行くと慣れていくので不思議です。本書は8つの短編が収められていますが数点気に入った作品を紹介します。
【痕の祀り】
加賀特掃会の降矢は出動した。斉一顕現体により退治された万状顕現体の死体を処理するためだ。万状顕現体の体液は高濃度の有機汚染物質である。斉一顕現体の絶対子の照射によってその毒性は大幅に中和されているとはいえ早く処理しなければならない状況に変わりはない。
なんのこっちゃですが、本文中に沢山埋め込まれたヒントによりこれは明らかにウルトラマンをモチーフとしています。解説によると「多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー」という本に収録されたということです。勘のいい方はお分かりかと思いますが、加賀特掃会は科学特捜隊に該当します。斉一顕現体はウルトラマン、万状顕現体は怪獣、絶対子はスペシウム光線ですね。
【堕天の塔】
月にある巨大な都市で作業に従事していたホミサルガは「大いなる光」によって都市にできた大陥穽の中を破壊され17階建ての上部4階となった作業塔に閉じ込められたまま落下していた。いつ激突するか分からない恐怖の中で奇妙なことに気付く。いくら構造物が大きいとはいえいつまでたっても激突しない上に落下が加速していない。
この作品は弐瓶勉という方の「BLAME!」という有名なSF漫画を下敷きにしているということです。その作品を読んでいないためか正直よく分からない話ではありましたが、スターウォーズに出てくるような巨大な円筒の都市の中を落下し続けているというイメージが妙に頭にこびりついて印象深い作品です。
【彗星狩り】
惑星間を飛行する擬峩族の親子三人。無機質の体と石英の目を持つ彼らは宇宙空間でもそのまま移動できる。彼らは育てている二頭の巨大な奎漏蚪にエサをやるため肥毓島に向かった。やがて彗星狩りの時が来た。奎漏蚪の一頭に擬峩族50人が乗って出発する。
十数ページの短い物語ながら本書で最も好きな話です。独特の世界観、独特の生物ながら人間と同じく彼らなりの成長や人生の営み、そして務めを果たしてこの世から去っていく運命が待っています。ハードSFながらなにか童話のような印象すら受けます。
酉島さんのSFの特徴はやはり世界観だろうと思います。ある世界観の中で物語が展開していくというよりも、世界観を語ること自体が目的ではないかとさえ感じます。それと前述のとおり独特の当て字。適当かと思えばそれぞれの言葉にはしっかり設定があるらしいです。とてもそこまで深堀する気力はありませんが。個人的にはまた読みたい作家ではありますが、とても人にお薦めする自信はありません。
【痕の祀り】
加賀特掃会の降矢は出動した。斉一顕現体により退治された万状顕現体の死体を処理するためだ。万状顕現体の体液は高濃度の有機汚染物質である。斉一顕現体の絶対子の照射によってその毒性は大幅に中和されているとはいえ早く処理しなければならない状況に変わりはない。
なんのこっちゃですが、本文中に沢山埋め込まれたヒントによりこれは明らかにウルトラマンをモチーフとしています。解説によると「多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー」という本に収録されたということです。勘のいい方はお分かりかと思いますが、加賀特掃会は科学特捜隊に該当します。斉一顕現体はウルトラマン、万状顕現体は怪獣、絶対子はスペシウム光線ですね。
【堕天の塔】
月にある巨大な都市で作業に従事していたホミサルガは「大いなる光」によって都市にできた大陥穽の中を破壊され17階建ての上部4階となった作業塔に閉じ込められたまま落下していた。いつ激突するか分からない恐怖の中で奇妙なことに気付く。いくら構造物が大きいとはいえいつまでたっても激突しない上に落下が加速していない。
この作品は弐瓶勉という方の「BLAME!」という有名なSF漫画を下敷きにしているということです。その作品を読んでいないためか正直よく分からない話ではありましたが、スターウォーズに出てくるような巨大な円筒の都市の中を落下し続けているというイメージが妙に頭にこびりついて印象深い作品です。
【彗星狩り】
惑星間を飛行する擬峩族の親子三人。無機質の体と石英の目を持つ彼らは宇宙空間でもそのまま移動できる。彼らは育てている二頭の巨大な奎漏蚪にエサをやるため肥毓島に向かった。やがて彗星狩りの時が来た。奎漏蚪の一頭に擬峩族50人が乗って出発する。
十数ページの短い物語ながら本書で最も好きな話です。独特の世界観、独特の生物ながら人間と同じく彼らなりの成長や人生の営み、そして務めを果たしてこの世から去っていく運命が待っています。ハードSFながらなにか童話のような印象すら受けます。
酉島さんのSFの特徴はやはり世界観だろうと思います。ある世界観の中で物語が展開していくというよりも、世界観を語ること自体が目的ではないかとさえ感じます。それと前述のとおり独特の当て字。適当かと思えばそれぞれの言葉にはしっかり設定があるらしいです。とてもそこまで深堀する気力はありませんが。個人的にはまた読みたい作家ではありますが、とても人にお薦めする自信はありません。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
この書評へのコメント
- そうきゅうどう2020-09-15 23:47
レビューの中で言及されている『BLAME!』はアニメ化されて2週間だけ劇場公開されたことがあります。公式がアップしている予告編のリンクを張っておきますので、よかったら。
https://www.youtube.com/watch?v=bGGN8n5rQJYクリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 コメントするには、ログインしてください。
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- 出版社:早川書房
- ページ数:0
- ISBN:9784152099525
- 発売日:2020年07月02日
- 価格:2530円
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