たけぞうさん
レビュアー:
▼
著名翻訳家「松村みね子」の英国・愛国の幻想翻訳集。
出版した幻戯書房は、作家の辺見じゅんさんが立ち上げ、
引き継がれているものです。
辺見じゅんさんの父は角川書店の創立者です。
ということは、角川春樹の姉でもあります。
そう聞くと、知らない出版社だったものが格式が整った感じがして不思議です。
銀河叢書と銘打ち、過去の作品を選りすぐって新編集したシリーズです。
編集作業が入るので復刊ではなく、新収録となる作品もあるのですが、
こうして現代とつながる作品が読めるのも新発見がありそうで
楽しい試みです。
参考までに、シリーズの既刊には田中小実昌、島尾ミホ、小沼丹などがあり、
タイトルを初めて聞く作品が並んでいます。
今回読んだ片山廣子さんは作家さんで、翻訳のときは松村みね子名義を
用いていた人です。わたしは初めましてでした。
副題のケルティック・ファンタジーがどうにも魅力的で手に取りました。
底本の三本と、アイルランド民話を少々、さらに片山さんのエッセーから
五十頁ほどを集め、合計で本文389ページと詳しめの解説で
400ページオーバーの構成です。
三本の底本を紹介します。
1.スコットランド作家フィオナ・マクラオドのケルト奇譚「かなしき女王」
2.夏目漱石「幻影の盾」現代語訳(原文は雅文体)
3.英国幻想作家フランシス・ベインの「印度物語集」
ケルト文学というとイエイツが思い浮かびます。
片山さんのエッセーにも、アイルランド文学を盛り立てた詩人イエイツとの
紹介があり、自分自身のアイルランド文学熱を語っています。
情報をつなげていくと、底本のマクラオドはイエイツよりも昔の人で、
十九世紀後半に活躍しています。
原典に近いのでしょうね。
片山さんは、本の発行にあたって井村君江さんにも相談しています。
そんな情報を見ているだけでも、気持ちが上がってきます。
マクラオドのかなしき女王は、近代文学だけあって話が飛びますし、
読みやすくはないです。でもそこには、伝統芸能の原典にあたるような
ちょっと特別な香りがあって、面白いとかを通りこした魅力がありました。
物語性だけをみれば、夏目漱石とベインの作品が楽しめました。
漱石が、アーサー王時代のブリトン人の騎士の話を書いていたというだけでも
驚きに包まれます。
夜烏城に住むクララに恋をしたウイリアムという、
漱石からは想像がつかいないお話に会えるのです。
ベインの印度奇譚は、インドの古典詩の翻訳という体をとった創作です。
古城で起きる仙界の人たちとの間で巻き起こる試練の数々など、
オーソドックスなお話で楽しく読めました。
なんだか、本を読み返すといいことがあるよと言ってもらえたような読書でした。
[こんな人にお薦め]
古いアイルランド系ファンタジーに興味がある人に。
引き継がれているものです。
辺見じゅんさんの父は角川書店の創立者です。
ということは、角川春樹の姉でもあります。
そう聞くと、知らない出版社だったものが格式が整った感じがして不思議です。
銀河叢書と銘打ち、過去の作品を選りすぐって新編集したシリーズです。
編集作業が入るので復刊ではなく、新収録となる作品もあるのですが、
こうして現代とつながる作品が読めるのも新発見がありそうで
楽しい試みです。
参考までに、シリーズの既刊には田中小実昌、島尾ミホ、小沼丹などがあり、
タイトルを初めて聞く作品が並んでいます。
今回読んだ片山廣子さんは作家さんで、翻訳のときは松村みね子名義を
用いていた人です。わたしは初めましてでした。
副題のケルティック・ファンタジーがどうにも魅力的で手に取りました。
底本の三本と、アイルランド民話を少々、さらに片山さんのエッセーから
五十頁ほどを集め、合計で本文389ページと詳しめの解説で
400ページオーバーの構成です。
三本の底本を紹介します。
1.スコットランド作家フィオナ・マクラオドのケルト奇譚「かなしき女王」
2.夏目漱石「幻影の盾」現代語訳(原文は雅文体)
3.英国幻想作家フランシス・ベインの「印度物語集」
ケルト文学というとイエイツが思い浮かびます。
片山さんのエッセーにも、アイルランド文学を盛り立てた詩人イエイツとの
紹介があり、自分自身のアイルランド文学熱を語っています。
情報をつなげていくと、底本のマクラオドはイエイツよりも昔の人で、
十九世紀後半に活躍しています。
原典に近いのでしょうね。
片山さんは、本の発行にあたって井村君江さんにも相談しています。
そんな情報を見ているだけでも、気持ちが上がってきます。
マクラオドのかなしき女王は、近代文学だけあって話が飛びますし、
読みやすくはないです。でもそこには、伝統芸能の原典にあたるような
ちょっと特別な香りがあって、面白いとかを通りこした魅力がありました。
物語性だけをみれば、夏目漱石とベインの作品が楽しめました。
漱石が、アーサー王時代のブリトン人の騎士の話を書いていたというだけでも
驚きに包まれます。
夜烏城に住むクララに恋をしたウイリアムという、
漱石からは想像がつかいないお話に会えるのです。
ベインの印度奇譚は、インドの古典詩の翻訳という体をとった創作です。
古城で起きる仙界の人たちとの間で巻き起こる試練の数々など、
オーソドックスなお話で楽しく読めました。
なんだか、本を読み返すといいことがあるよと言ってもらえたような読書でした。
[こんな人にお薦め]
古いアイルランド系ファンタジーに興味がある人に。
お気に入り度:





掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
この書評へのコメント
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:幻戯書房
- ページ数:0
- ISBN:9784864882071
- 発売日:2020年10月26日
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。