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ぽんきち
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知財xラノベ。意外な組み合わせだけどおもしろい。
集英社オレンジ文庫はライト文芸を謳うレーベル。表紙からも窺えるように内容的にはライトノベルである。
お仕事小説の一種であるが、舞台が中堅飲料会社の知的財産部という点が目新しい。知的財産=知財というのは、財産的な価値がある情報であって、形をもたないもの、例えば発明やデザイン(意匠)を指す。製品開発などから得られたそうした無形の財産を、「これは当社が発明しました」と権利化し、他社との競合がないか留意し、他社が自社の権利を侵害しているようなら警告するといった業務にあたる。地味といえば地味、お堅いといえばお堅い。
本作、ドラマ化もされていてそちらを先に見た。視聴率はさほど高いとは言えないまま終わったようなのだが、個人的にはおもしろかった。それで、原作を読んでみた。

主人公は藤崎亜季。一見デキるキャリアウーマンに見えるが、中身は抜けているところも多い。だが素直でまっすぐなのが美点。知財のことはまったくわからず配属になったが、頑張っていこうと思っている。
直属の上司は弁理士の北脇。親会社からの出向である。クールで若干変わり者。仕事はバリバリできる。周囲からは冷たい天才肌と思われがちだが、陰ではしっかり努力し、そして実は根は「いい人」である。
この凸凹コンビが、知財に関わるさまざまなビジネスのトラブルを解決していく。

知財xラノベの組み合わせ、やや意外なところだが、これがなかなかどうしておもしろい。
自分の作ったキャラクターが勝手に商標登録されてしまったら?
自社製品のパロディ商品が売られていた。相手に悪意はなさそうだけど、許す? 許さない?
全社あげて力を入れていた商品の根本の技術が他社に特許化されてしまった。もしや情報漏洩なのか?
さまざまな事件を通し、知財一年生だった亜季は徐々に成長していき、北脇とのバディも段々と色合いが変わっていく。
この会社、どうやら高崎近辺であるようで、「ハラダのラスク」が出てきたり、亜季が自家用車通勤していたり、といった地域性が感じられる設定もおもしろい。
何より知財に関連するビジネスの駆け引きをわかりやすく説いているのがすごい。著者インタビューによれば、元々は理系の研究者をしており、知財を進路とする知人もいたとのこと。なるほどと思わせる手堅さがある。
けれど一方で、ラノベらしさもしっかりあり、亜季と北脇の関係性がどうなっていくのかという点でも読ませる。

2巻が既刊、3巻が近日出版とのことで、続編もいずれ読むかもしれない。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1827 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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