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Wings to fly
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青春スポーツ小説:モノづくり編、障がい者スポーツ競技を支える「技術者たちの誇り」を描く。
車いすテニスの試合をご覧になったことがおありだろうか。選手は車いすを巧みに繰り、コートを走り回る。そのスピード感と躍動感に魅せられてしまう。「ああ!もう絶対返球できない!」と思ったボールに、車いすを疾走させて追いつき、相手コートにカウンターショットを叩きつける姿のカッコイイったらない。

車いすは横の移動が出来ないので、球の来る方向に素早く回転させて回り込むように移動している。車いすテニスの魅力のひとつは、神技のようなチェアワークだ。本書はその「競技用車いす」に焦点を当てた小説なのである。
主役が交代するふたつの巻でひとつの物語となっている『パラ・スター』、本書<Side百花>のヒロインは、車いす造りの技術者を目指す。

山路百花は「親友のために、最高のテニス用車いすを作りたい」という夢を抱いて、車いすメーカーの藤沢製作所に就職した。親友はテニスでインターハイ出場を果たした後、交通事故で脊髄を損傷し、自力で歩けなくなった。あまりにも大きな挫折を乗り越え、車いすテニスで再び頂点を目指す君島宝良は、百花の誇りであり心の支えである。その宝良に比べて自分の進歩が遅すぎることに、百花は焦りを覚えている。

心優しく自信がなく、人の心には敏感な百花。そっけなくて心の内を人に見せない、クールビューティー宝良。この世で一番愛するテニスを奪われ完全に心を閉ざした宝良に、冷たくあしらわれても寄り添い続けた百花の姿と、彼女の夢の行方が描かれる。

「青春スポーツ小説:モノづくり編」である。
この本を読むまで知らなかったのだが、テニス用の車いすにはブレーキがついていないそうだ。車輪がハの字型になっているのにも理由がある。驚くべき緻密な設計と、最高のパフォーマンスを引き出すためのミリ単位の調整。顧客の気持ちに向き合い、その人のために何が最善かを考えること。

競技を支える技術者たちの誇りにシビレル。
足を機能を失った少女に、百花と宝良の連携プレーで新しい世界が開かれる場面には、思わず涙腺が緩んでしまった。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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