darklyさん
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理論物理学者の佐治晴夫さんとその主治医の堀江重郎さんによる科学、医療、芸術、性差、社会などお互いの専門はもちろんそれ以外の分野においても博学ぶりをいかんなく発揮された対談集です。
本書は理論物理学者で宇宙創成時の「ゆらぎ」研究で有名な佐治晴夫さんと彼の主治医でもある泌尿器科医の堀江重郎さんの対談本です。章ごとのテーマに沿って対談が進んでいくわけですが専門分野だけでなく非常に博学な二人ですので興味深い知識の化学反応が見られると同時に平易な言葉で会話をされているので私でも十分についていけました。
第1章「科学は生命の歌をうたう」では科学と医学の話題を中心としてざっくばらんに語り合います。面白い話は沢山あるのですが、その中で臨死体験についての堀江さんの考えを読みとても嬉しくなりました。
第2章「医学の現実を見つめて」では重い医学界の現実が語られます。ついこの間話題となった安楽死についても専門家ならではの深い議論がなされます。時代が移ろい価値観が変わっていくに従い死と向き合う医学界にも難しい局面が多く訪れるようになりました。「シェアード・デシジョン・メイキング」これは従来「インフォームド・コンセント」と呼ばれていたものですが要は治療方法について患者も同意したでしょという手順を踏むことです。
これについてはある意味医者の責任逃れのような側面もあるでしょう。リーガルリスクが高まっている中ではある程度はやむを得ないかもしれません。私が最近経験したことで辟易したのが、奥歯が欠けてグラグラになり痛いので抜いてもらおうと歯医者に行った時のことです。
第4章「男性復活」では男女の生物としての差と現代の生活から圧倒的に女性の時代であることが語られます。その中で男性の生き方として次のように語られました。
まだまだ面白い話題が沢山あります。同じ専門の研究者同士の対談はどうしても基礎知識がなければ分かりにくいことが多いですが、本書は全く分野の違う専門家同士の対談かつ博学の二人によるものであり誰が読んでも知的好奇心をくすぐられ面白く分かりやすい内容となっていると思います。
第1章「科学は生命の歌をうたう」では科学と医学の話題を中心としてざっくばらんに語り合います。面白い話は沢山あるのですが、その中で臨死体験についての堀江さんの考えを読みとても嬉しくなりました。
そのほか山に登って臨死体験をすると、たとえば斜面を滑落していくあいだにいろいろなことを走馬燈のように思い出すという話はよく聞くと思います。そういうスピリチュアルな体験は、ケミストリーだけではなくて、われわれのDNAのなかに、ある状態のときはこのような感覚を持つという仕組みがあるような気がしています。なぜ嬉しいのかというと数年前に何かの書評で私は臨死体験で語られる「光」や「お花畑」「走馬燈」などなぜ同じ体験を人がするのかに対し根拠はありませんが生き延びることをプログラムされている人間がどうしても避けられない死を目の前にしたとき、それまでは激しい痛みや苦痛という非常シグナルを発していた人体が安らかに最期を迎えることができるようにDNAにプログラムされているのではないかと書いたからです。堀江さんのような医学界の重鎮の方の中にもそのように考える方がいらっしゃるのが嬉しかったのです。
第2章「医学の現実を見つめて」では重い医学界の現実が語られます。ついこの間話題となった安楽死についても専門家ならではの深い議論がなされます。時代が移ろい価値観が変わっていくに従い死と向き合う医学界にも難しい局面が多く訪れるようになりました。「シェアード・デシジョン・メイキング」これは従来「インフォームド・コンセント」と呼ばれていたものですが要は治療方法について患者も同意したでしょという手順を踏むことです。
これについてはある意味医者の責任逃れのような側面もあるでしょう。リーガルリスクが高まっている中ではある程度はやむを得ないかもしれません。私が最近経験したことで辟易したのが、奥歯が欠けてグラグラになり痛いので抜いてもらおうと歯医者に行った時のことです。
私「グラグラして痛いので抜いてください」私は別の選択肢も提示しましたよと説明責任を果たしたいのでしょうが、あまりにしつこいのもどうかと思います。
歯医者「抜いても良いですが抜かなくても良いですよ」
私「抜かないと何か良いことがありますか?」
歯医者「いえ、特にありません」
私「では抜いてください」
歯医者「抜いても良いですが抜かなくても良いですよ」
以下この会話ブロック×3
第4章「男性復活」では男女の生物としての差と現代の生活から圧倒的に女性の時代であることが語られます。その中で男性の生き方として次のように語られました。
「日常生活については女性のほうが圧倒的に得意なんですよ。男性はコンプレックスを持っている。そうすると男性にはロマンを発揮する場所が必要なんです。それはビデオやアニメのような映像でもいいし、ゲーム、あるいは実際に戸外に行って釣りやスポーツをするのでもいいけれども、ロマンを発揮する場を持つことが重要だと思いますね。」「ロマンを発揮できるための場、あるいは、自分がいられる場所。要は、居場所を確保することですね。僕の知人に建築家がいますけれど、彼は都心の狭いところに家を建てましたが、家の中に段ボールで囲ったような小さな自分のスペースをちゃんと持っています。これは相当な救いになるかもしれませんね。」男性の皆さん共感しませんか?
まだまだ面白い話題が沢山あります。同じ専門の研究者同士の対談はどうしても基礎知識がなければ分かりにくいことが多いですが、本書は全く分野の違う専門家同士の対談かつ博学の二人によるものであり誰が読んでも知的好奇心をくすぐられ面白く分かりやすい内容となっていると思います。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
この書評へのコメント
- ムーミン2号2020-08-06 20:29
最近、母親が手術を受けたのですが、手術の同意書はもちろん、麻酔にはじまり、途中で使用する機械や薬についてもいくつも同意書をとられました。医者の説明では、同意書をとることが定められているということでしたので、社会の法規上でも何重にもリスク回避の方策がとられているんだなぁ、と感じたことです。ワタシが手術を受けた20年ちょい前は、インフォームドコンセントが言われだした頃でしたが、医者の都合で説明があったりなかったりでした。ワタシにはな~んにも説明なしで、こちらからどういう手術をするのかと聞かないと説明してもらえませんでした。それも聞かれることにかなりイラだってましたね。この医者は信用できねぇ、と感じてしまいましたね。
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- 出版社:春秋社
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- ISBN:9784393716342
- 発売日:2020年01月28日
- 価格:1980円
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