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ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
在日コリアン四世代の年代記。
★上下巻合わせての感想です。


日本が朝鮮を占領した1910年に始まり1989年までの、あるコリアン家族四世代の年代記的物語だ。
釜山の小さな漁業の島で、漁師のための下宿屋を営んでいた一家は貧しい。
この家の一人娘ソンジャは、見籠った時、彼女の恋人が結婚できる相手ではなかったと知る。
当時、下宿に身を寄せ病気療養していた牧師パク・イサクは、大阪の教会に赴任する途上だったが、恩人の娘ソンジャを妻にして、生まれてくる子どもに氏を与えることを約束する。二人はイサクの兄夫婦を頼って大阪に渡る。舞台が朝鮮半島から日本に移って物語は始まる。


戦争が終わるまでは、コリアンたちにとって、日本は「朝鮮人が家畜も同然に扱われている国」だった。それは比喩なんかではないことを、半島に暮らすコリアンも在日コリアンも、物語のなかで身をもって体験している。


戦争が終わり、朝鮮半島が解放されたとき、日本人は変わっただろうか。
穏やかで礼儀正しい顔の下に隠された底なしの悪意と冷淡さに出会い、なぜ、と問いかけつつ、いやいや、これとそっくり同じでないとしても、よく似たことは今だって起きているのだろう。


ソンジャたち一家は遠い親戚まで抱き込んだ大家族だ。小さないざこざはあるものの、互いをいたわり合い助け合う塊だ。
針と毒を孕んで吹いている風を避けて身を寄せ合っている、小舟のように感じる。


ソンジャたち家族の人生を追いかけながら、私は、彼らを囲む日本人について読んでいる。


日本人だってひどい目にあった。差別される悔しさも苦しみも知らないわけではないのに、なぜか差別する側に媚び諂う。と、ある人がいった。
それなのに、同じ国に生まれ育ったコリアンを見下し、差別の目を向けるのはなぜだろう。


ある人が発する「日本はこれからも何一つ変わらない」という言葉は、日本人には耳が痛い。
変わらない、と言い切る人たちは、実際変わらない国と人とをすでに見放している、置いてきぼりにしているのかもしれない。
ここでコリアンとして生きていく事は厳しい。それでも、覚悟を持って、遥かな高みを臨んでいる。




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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1742 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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