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献本書評
休蔵さん
休蔵
レビュアー:
日常の隣にある裏社会。表と完全に隔絶された本書の裏社会には、表社会で存在を消した人々が蠢く。“意思”からの作業を実行することが彼らの生きる糧。作業内容は、殺人である。

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

 世の中、表があれば裏がある。
 日常を送る社会にも裏社会がある。
 表と裏の間に一定の繋がりがあり、裏社会に生きる人々も表社会の住民としての“登録”がある。
 しかし、本書が描く裏社会に住む人々は、表社会と完全に分断されている設定だ。
 唯一の繋がりは本書のタイトルにある「KILLTASK」、つまり裏の人間が表の人間を葬り去ること。
 殺人だ。

 本書の主人公“僕”は殺し屋見習として登場する。
 先生となったのは“悪魔”と“天使”
 2人と行動を共にする“僕”は、その仕事も目の当たりにする。
 “意思”からの“KILLTASK”の実行だ。
実行したらきちんと作業報告をする。
 オプションがあれば、その報告も。
 そして、仕事終わりにはアルコールを胃に流し込む。
 表世界と同じに日常生活のようだが、彼らは表社会では行方知れずか死んでいて、存在しないはずの世界で人知れず人を消す。
 “人知れず”は正確ではない。
 実際に変死体は見つかり、警察の捜査がはじまる。
 しかし、他殺とはならず、“トリイ”つまり迷宮入りとして片づけられる。

 “悪魔”と“天使”はやり方が大きく異なる。
 “悪魔”は勢いのままにターゲットの命を奪う。
 顔を蹴りつけ、相手の戦意を消失させ、一気にカタをつける。
 最後は様々な種類の毒薬を注入する。
 毒薬の効用はオプションにより使い分ける。
 一方の“天使”は指輪に仕込まれたナイフを使う。
 相手を慈しむように頬を手で包む、頸動脈に刃を突き立て切断。
 わざわざ血にまみれるやり方を採用しているのには、“天使”なりの理由が…。

 この2人とさらにバックアップメンバーとも言える杏と一緒に行動をするようになった“僕”。
 もちろん、表社会では行方知れずの身。
 それも家族を斬殺した殺人者として。
 ひょんなことから“天使”と出会い、生か死かの希望を問われた“僕”は、「死にたくない」と答えた。
 この一言が“僕”の人生を大きく変え、家族殺害の真相に迫ることに繋がっていく。
 そして、黒幕として登場したのは…。

 毎年相当数の行方不明者が出る。
 彼らはどこにいるのか、それとももういないのか。
 そして、多くの自殺者がいる現実。
 そんな現実社会の闇をうまく取り込んだ仕上げられた1冊。
 「なぜ人を殺してはいけないのか」という哲学的な命題にも回答を示した意欲作だ。
 エンターテイメントとして楽しむことはもちろん、いろいろと考えさせられた。
 人間の人間らしさは、どこにあるのだろうか。
 人間は、生物界のなかで清いものと言えるのだろうか。
 むしろ、人間だからこその汚さ、醜さがあるはず。
 本書はそんなところにも目をつけていて、興味深かった。
  
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:451 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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