DBさん
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滅びと恋を描いた詩人の話
アルゼンチン文学をひとりの作家にまとめて体現させるとしたら、それはルゴーネスだそうです。
ホメーロス、ダンテ、ユゴー、そしてホイットマンの影響を受けている作品を残した詩人だが、変節と自己否定を繰り返したルゴーネスの生涯は引き延ばされた自殺のようなものだったとボルヘスは語る。
最初の短編「イスール」は、イスールという名前のサルを買った男の話だった。
猿は実は人間だったが、話すことをやめたために獣に成り下がったという説を証明するためにサルをもとの話せる状態に戻そうとする男の狂気を描いたサイエンス・フィクションのような話だ。
男はイスールの言葉を話す能力を引き出すためにあらゆる努力をするも、イスールはただ身振りと視線で語るだけだった。
だが召使の一人がサルの独り言を聞いたという話を聞いて、男はイスールに言葉を話させるために折檻する。
それが原因で死んでいくサルの姿を描くが、男の狂気はサルと共に死んでいったのだろうか。
「火の雨」は燃える銅の粒が降ってきて滅んだ町の様子を描いた作品だ。
まるでポンペイを連想させる作品だが、滅びる町を観察する男の姿が興味深い。
表題作である「塩の像」は塩の柱になったロトの妻の話を題材にしたひとりの修道士の話だ。
洞窟に住み毎日を祈りに捧げる修道士だったが、塩の柱となったロトの妻がその中でまだ生きているという話を聞きつける。
ロトの妻をその責め苦から救うのが自分の使命だと感じた修道士は死海まで旅をして、くだんの塩の像に洗礼を施した。
責め苦から解放され死にゆく老婆に修道士が発した問いは「振りかえった時に何を見たのか」というものだったが、答えを聞くや修道士は倒れて死んだ。
「火の雨」とあいまって、神の火で滅びる町の姿が目に浮かぶかのような作品だった。
大事に飼われていたはずの馬たちの反乱を描いた「アブデラの馬」や、自分の影がサルだと信じる男の客となった男の話である「説明しがたい現象」のように空想的な話もあれば、「フランチェスカ」のように古文書から読み解いた兄嫁と弟のプラトニックな愛を題材にした話もあり。
「ジュリエット叔母さん」は七十歳になる叔母と五十歳になる甥の間の感情の交流を描いた作品だが、その心をシェイクスピアに例えながらも白髪の姿が月光に浮かぶというなんとも言えない話だった。
確かに幅広く幻想的な作品を生み出した作家としてルゴーネスの名が記憶されるのにふさわしいと思う。
ホメーロス、ダンテ、ユゴー、そしてホイットマンの影響を受けている作品を残した詩人だが、変節と自己否定を繰り返したルゴーネスの生涯は引き延ばされた自殺のようなものだったとボルヘスは語る。
最初の短編「イスール」は、イスールという名前のサルを買った男の話だった。
猿は実は人間だったが、話すことをやめたために獣に成り下がったという説を証明するためにサルをもとの話せる状態に戻そうとする男の狂気を描いたサイエンス・フィクションのような話だ。
男はイスールの言葉を話す能力を引き出すためにあらゆる努力をするも、イスールはただ身振りと視線で語るだけだった。
だが召使の一人がサルの独り言を聞いたという話を聞いて、男はイスールに言葉を話させるために折檻する。
それが原因で死んでいくサルの姿を描くが、男の狂気はサルと共に死んでいったのだろうか。
「火の雨」は燃える銅の粒が降ってきて滅んだ町の様子を描いた作品だ。
まるでポンペイを連想させる作品だが、滅びる町を観察する男の姿が興味深い。
表題作である「塩の像」は塩の柱になったロトの妻の話を題材にしたひとりの修道士の話だ。
洞窟に住み毎日を祈りに捧げる修道士だったが、塩の柱となったロトの妻がその中でまだ生きているという話を聞きつける。
ロトの妻をその責め苦から救うのが自分の使命だと感じた修道士は死海まで旅をして、くだんの塩の像に洗礼を施した。
責め苦から解放され死にゆく老婆に修道士が発した問いは「振りかえった時に何を見たのか」というものだったが、答えを聞くや修道士は倒れて死んだ。
「火の雨」とあいまって、神の火で滅びる町の姿が目に浮かぶかのような作品だった。
大事に飼われていたはずの馬たちの反乱を描いた「アブデラの馬」や、自分の影がサルだと信じる男の客となった男の話である「説明しがたい現象」のように空想的な話もあれば、「フランチェスカ」のように古文書から読み解いた兄嫁と弟のプラトニックな愛を題材にした話もあり。
「ジュリエット叔母さん」は七十歳になる叔母と五十歳になる甥の間の感情の交流を描いた作品だが、その心をシェイクスピアに例えながらも白髪の姿が月光に浮かぶというなんとも言えない話だった。
確かに幅広く幻想的な作品を生み出した作家としてルゴーネスの名が記憶されるのにふさわしいと思う。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- ISBN:9784336025739
- 発売日:1989年11月25日
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