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三太郎さん
三太郎
レビュアー:
東京の高級住宅街・松濤のお嬢様、華子の婚活事情。
作者の山内マリコさんは1980年生まれで、先日読んだ津村記久子さんより3学年下らしい。僕がこれまで読んだ中で最も若い年代の作家さんだ。

本作は2016年に発表され、今年映画が公開される。皆さんの書評を読むと面白そうだったのでレビューしてみることに。

文章は読み易いのだけれど、ファッション関係のカタカナの意味が解らずややストレスを感じました。でも読み飛ばしても?物語の理解には困らなかったかな。

東京のホテルやお店が実名で出てくるのも、東京に不案内だとストレスになるかもしれません。帝国ホテルやホテルオークラは行く機会があったから何となく分かりますが、アフタヌーンティーなんて本物は見たことないよ。

物語の主人公は渋谷区松濤で代々病院を営んでいる榛原家の三女の華子。もう直ぐ27歳になるので結婚を急ごうとしている。彼女の結婚相手になる青木幸一郎は地方の名士の一族の出で、旧神谷町(虎ノ門)に広大な屋敷を持つ家の跡取り息子の慶応ボーイ。この小説では慶応ボーイの描き方がかなり辛辣(幸一郎のような人間ばかりではないと思うけれど・・・)。

もう一人の主要登場人物が地方の漁師町出身で慶応大学に入学した美紀。彼女は幸一郎と同級生だったが、実家の仕送りが途絶えたので退学し、夜の仕事をしている時に幸一郎と再会する。愛人とまでは行かないがセックスの相手もする都合の良い女の役回りに甘んじていた。

幸一郎が華子と婚約した際に美紀と華子を引き合わせたのが、華子の小学校からの友人の相楽さん。美紀は華子に会って、幸一郎からは身を引くと宣言し二人は打ち解ける。あまつさえ、華子は美紀に幸一郎との結婚生活への不安について相談するようになる。結局二人の結婚は半年で破綻してしまう。

華子や相楽さんは東京生まれの東京育ちで、中産階級の出身。彼女らの交友関係は出身階級の狭い範囲で充足していて、結婚相手を探すのも一苦労。地方出身者や庶民階級との交際は文化的なバックグラウンドが違い過ぎて難しい。相楽さんはそれが嫌でドイツへ飛び出していったのですが。

一方の幸一郎はもっと狭い階級のなかで生きていて、地方出の美紀は遊び相手にしかならないと思っている。階級の外部の人間を見下すような習慣が身についてしまっている。結婚後も華子を思いやることがない。

華子は離婚後に家を出て、相楽さんに助けられながら自立しようとするところで物語はとりあえず終わるのですが、いかにも華子さんの将来は前途多難そうです。彼女はほぼ空っぽなまま30歳を迎えてしまったのですから。でもバイオリニストである相楽さんのマネージャー役を務めているうちに自信をつけてきたようではあります。

作者の山内さん自身は富山の出身で、大学のときに大阪に出て、25歳で東京にやってきたとか。地方出身者から見た東京は自身の感覚が反映されているのでしょうが、東京育ちの主人公が思う東京は彼女の想像力の賜物なのでしょう。ちょっと極端な気はしましたが。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:834 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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