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星落秋風五丈原
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もし彼がいなければ 図書館で本は横並びに置かれていたかも!?
 最近は「いよっ国がみえるぞ」(意欲に燃える説も)と覚えるらしい。1492年は、コロンブスがアメリカ大陸を発見した年として、世界史試験の頻出問題の一つだ。だが、オトナになって考えてみれば、ヘンな話だ。そもそも発見て何だ発見て。既に土地があって先住民(先に住んでいた民)もいたのに。まるで自分が初めて見つけた場所みたいに、勝手に宣言して国王に領主にしてもらおうとするなんて厚かましい。まあこの頃の冒険野郎なんてそんなものだ。更に、国を長く離れると、あることないこと国王に言上されるというので慌てて帰国すると、新大陸に残してきた人達が殺される事態も起きる。借金取りに追われ、「黄金が出るんですよ」とチラ見せしては資金を得てきたコロンブスも、末路は悲惨なものだった。

 さて、そのコロンブスに息子がいた。正妻の息子ディエゴと庶子エルナンドである。コロンブスが支援を仰いだスペインで庶子故に苦労した男といえば、チェーザレ・ボルジアがいる。エルナンドの苦労も並々ならぬものがあったはずだ。ましてや彼は、父親が教皇でなく、むしろ山師扱いされていたコロンブスだ。

 それでも彼は父親を愛していたようだ。というのは、盛った所があるものの、コロンブスの所業が世に知れたのは、航海を共にしたエルナンドの著作『コロンブス提督伝』によってである。何事かを成しても、それを伝える者がいなければ、後世に残らないのだ。

 “残す”事の意義を知っていたエルナンドがもう一つ後世に残そうとしたものがある。それは「世界の図書館」だ。仰々しい命名だが、本人は至って真剣だったらしい。当時の書籍のみならず、イラストなどを所かまわず買いあさったそうだ。また、彼自身ハプスブルグ家に仕えていたので、各国の資料を集めやすかったことも大きい。但し彼にとって誤算だったのは、“新大陸を発見した提督”コロンブスに、スペインがさして金を支払ってくれなかったので資金に限りはある。それでも、自分の名を残す事に熱心だった父親、父親に似て愛人騒動を起こすダメ兄、二人の面倒を見ながらも宮廷の仕事もして、かつ後世に残る図書館を遺産として残そうとするとは、最も優れた能力の持ち主なのに、何て控えめで利他愛の持ち主なんだ。ちなみに、表紙絵にあるように書籍を縦に並べることを始めたのも彼らしい。もし、横に寝かせてどんどん重ねていけば、下に置いた本だけが傷んでしまう。何せ目指すのは“世界”なので、志半ばで彼の寿命は尽きてしまうが、いくつかは残り、当時の様子を何百年先の私達に知らせてくれる。まさに、ライブラリアンの鑑と言える。

大航海時代について書かれた本
ヴァスコ・ダ・ガマの「聖戦」: 宗教対立の潮目を変えた大航海
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2329 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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