かもめ通信さん
レビュアー:
▼
様々な形で語られる「愛」と「不在」は、いずれの物語においても、なんらかの形でハイチと分かちがたい関わりを持っている。にもかかわらず(とあえて言うが)、なぜだかとても身近に感じられる物語なのだ。
エドウィージ・ダンティカの本が作品社から出るのは
これが6冊目だろうか。
既に読んだ本もあるが、
読みたい本のリストにあげたまま未読の本もあるので
そのすべてを確認したわけではないが
作品社の出すダンティカ本の魅力の一つとして
巻頭に作家自らが書き下ろした「日本の読者への手紙」が
収録されていることがあげられる。
作家が今なにを考えているのかはもちろん、
その作品と常に地続きのハイチは今どんな状況下にあるのか
日本の報道ではなかなか知ることが出来ないあれこれも興味深い。
その手紙の中で作家はこの作品集についてこう紹介している。
その言葉どおり、様々な形で語られる「愛」と「不在」は、
いずれの物語においても、なんらかの形でハイチと分かちがたい関わりを持っている。
にもかかわらず(とあえて言うが)、
なぜだかとても身近に感じられる物語なのだ。
「騙すよりも騙される方がましだよ」と
慰めにもならない言葉をかけたくなったり、
主人公と共に、憤ったり、悲嘆にくれたりしながら、読み進めていると
こんな場面に行き会った。
「熱気球」という二人の若い女性が登場する物語の一節。
どちらの女性の気持ちもわかる気がすると同時に
どちらにもなれない自分にもどかしさを感じながら読み進めると、
心のどこかで安堵の気持ちをもつ自分に気づく。
そしてまた安堵する自分を恥じいりもする。
厳しい現実に直面している人々の姿を描いている時も
決して激しい口調ではない、
むしろ柔らかく温かく感じる語り口だ。
だがその温かみの中には、
読みながら、共感し、理解したつもりになっていた私に、
そのあさはかさを指摘するするどさもまた含まれている。
そう、私はいつも対岸にいるのだ。
そのことを改めて意識しながら、
再び本のページをめくる。
<関連レビュー>
クリック?クラック!
これが6冊目だろうか。
既に読んだ本もあるが、
読みたい本のリストにあげたまま未読の本もあるので
そのすべてを確認したわけではないが
作品社の出すダンティカ本の魅力の一つとして
巻頭に作家自らが書き下ろした「日本の読者への手紙」が
収録されていることがあげられる。
作家が今なにを考えているのかはもちろん、
その作品と常に地続きのハイチは今どんな状況下にあるのか
日本の報道ではなかなか知ることが出来ないあれこれも興味深い。
その手紙の中で作家はこの作品集についてこう紹介している。
悲しい記念日は、かつて存在した人や物の不在を大きく膨らませます。この本に収めた短編小説の多くは不在についてのものですが、愛についてのものでもあります。ロマンティックな愛、家族の愛、国への愛、そして他のタイプの厄介で複雑な愛などです。私はその物語の筋をここで明かしたくはありません。それはぜひ、どうぞ、みなさんご自身で見つけだしてください。
ここにあるのは、八つの――願わくは読者の方々にとって魅力的な――短編小説です。
その言葉どおり、様々な形で語られる「愛」と「不在」は、
いずれの物語においても、なんらかの形でハイチと分かちがたい関わりを持っている。
にもかかわらず(とあえて言うが)、
なぜだかとても身近に感じられる物語なのだ。
「騙すよりも騙される方がましだよ」と
慰めにもならない言葉をかけたくなったり、
主人公と共に、憤ったり、悲嘆にくれたりしながら、読み進めていると
こんな場面に行き会った。
「私はあまりにたやすく、聞いたり見たり目撃したりする話に、とくに悲劇的ないたましい話に、心を揺さぶられるの」彼女は続けた。「これが私の人生の物語になるのだろうと思う。あまりにたやすく他の人びとの物語に、考えと行動を左右される女の子になる」
「熱気球」という二人の若い女性が登場する物語の一節。
どちらの女性の気持ちもわかる気がすると同時に
どちらにもなれない自分にもどかしさを感じながら読み進めると、
心のどこかで安堵の気持ちをもつ自分に気づく。
そしてまた安堵する自分を恥じいりもする。
厳しい現実に直面している人々の姿を描いている時も
決して激しい口調ではない、
むしろ柔らかく温かく感じる語り口だ。
だがその温かみの中には、
読みながら、共感し、理解したつもりになっていた私に、
そのあさはかさを指摘するするどさもまた含まれている。
そう、私はいつも対岸にいるのだ。
そのことを改めて意識しながら、
再び本のページをめくる。
<関連レビュー>
クリック?クラック!
お気に入り度:







掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント

コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:作品社
- ページ数:0
- ISBN:9784861828157
- 発売日:2020年06月25日
- 価格:2640円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。






















