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rodolfo1さん
rodolfo1
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輪廻から外れる運命だった僕は、天使に導かれ、修行を達成すれば輪廻への復帰を約束される。その修業とは、真という中学生の身体に入り、彼の誤った人生を見直す事だった。さまざまな助けを借りて、ついに彼は。。
死んだはずの僕の魂の前に、いきなり天使が現れました。抽選に当たったので、本来大きなあやまちを犯して死んだ僕は、輪廻のサイクルからはずれ、二度と生まれ変わる事は出来なかったのだが、ある条件をクリア出来れば、再び輪廻のサイクルに戻るチャンスを与える、と言うのでした。何となく嫌だ、と僕は答えます。しかし神には逆らえないのだと天使は告げます。

その条件とは、一定期間、下界にいるだれかの身体を借りて過ごす。前世に僕が犯した過ちの大きさを自覚できれば条件クリアだと言うのでした。僕は小林真という少年の身体に入りました。真は服毒自殺を図り、もうすぐ死ぬのでした。その身体に僕が入りました。僕は真に成り代わったのでした。

生き返った息子を前にして両親は狂喜乱舞します。しかし枕元にいた兄の満は何故か憮然としていました。退院した真は自宅でご馳走を振る舞われました。いい家庭のように思えました。しかし現れた天使はこの家庭について解説します。父親は極めて利己的な人間で、母親はフラメンコ教室の講師と最近まで不倫していたと言いました。そして、真の自殺の引き金になったのが、真の初恋の少女、中学の後輩のひろかが中年男と連れ立ってラブホテルに入って行き、ついでに母親がフラメンコ講師と同じホテルから出てきたのを目撃した事だと言いました。

しかも帰宅すると、兄の満が、父親の会社が悪徳商法で検挙されたと言いました。しかし帰宅した父親は喜んで躍り狂いました。悪徳商法をしていた上層部が、ごっそり首になり、自分は昇進したのだと、悪徳商法については何の反省も無く喜んだのでした。しかも満は無神経な意地悪男で、真の背が低いのをさんざんにからかっていました。そういった事実は、天使が持っていた本に全部書いてありました。その本とは実は。。。しかも天使は、真は中学三年生で、半年後に高校受験を控えていると暴露しました。

真は実態を知った家族達と疎遠になり始めます。母親の食事を食べ残し、家族とは口をきかなくなりました。しかし家族はそれをとがめません。自殺前から真はそういう子供だったからでした。真は気がつきました。長い間休んでいたに違いないのに、同級生は誰も訊ねて来ませんでした。ノートや連絡物も届きません。自分には友達が誰もいなかったのか?と天使に聞くと暗に認めました。たったひとり声をかけてきたのは後輩のひろかだけだったと言いました。

登校してみましたが、真はみんなに無視されていました。しかし一人のチビ女がつきまといます。いつもの小林ではない、きっとセミナーに行って自分を変えたのだろうと探りを入れて来ました。真は放課後の美術室を訪れます。真は熱心な美術部員だったのでした。一枚の油絵が目につきました。真の絵でした。その絵に手を入れていると、ひろかがやって来ました。以前から気が向くと美術部に遊びに来、真に声をかけていたのでした。ひろかはその絵を、きれいな空の絵だと言いますが、またまた現れた誰かがこれは海の絵だと言い、真は興奮して同意しました。あのチビ女でした。

チビ女は唱子でした。真と同級生で美術部員でした。真は唱子に粘着されますが、無視します。真は油絵に沈潜しますが、担当教師に呼び出されました。全く勉強をしていなかったのでした。こんな成績では私立の単願しか通らないと言われ、ではそれにすると言いました。真は、少しでも現状を打破すべくいろいろ試みます。ださい髪を切り、流行りのスニーカーを買いました。同級生たちにも話しかけるようになりました。

しかし父親に、公立高校に行ってくれと頼まれました。満が医学部を目指しているからでした。真は母親に、公立受験を承諾し、自殺の原因は勉強のせいではないと言いました。では何が原因かとヒステリックに問いかける母親に、真は思わず母親の不倫の事を口走り、母親は泣きだしました。真は雨の降る中、外出しました。天使に案内させてひろかに会いに行きました。しかしひろかはまた中年男とホテルに入る所でした。真は思わずひろかを連れ去りました。

あの男は誰だと聞く真に、ひろかは自分の愛人だと言いました。自分の欲しい高価な物を手に入れるには愛人になるしかなかったのだとあっさり打ち明けました。気に入った服を来ているととても幸せだと言い、真も自分とエッチをしたいなら2万円払えと言いました。そしてひろかは男の元に去りました。現れた天使に、真は、自分は臆病者でひろかを救えないと言い、天使は、14歳の君が誰かを救うのは難しいと諭しました。

そして、真のこういう生活は長くて一年しか続かないと言いました。その後は真の中の魂は消滅し、真は死ぬ、と言いました。真は高熱を出し、泥棒達に襲われました。スニーカーと財布を盗られ、袋叩きに会いました。助けてくれたのはなんと兄の満でした。真は寝つき、見舞いに唱子が訪れました。友達が、真がひろかと一緒の所を見たと言い、ひろかは男子から金を巻き上げるタチの悪い女だから気をつけろと言いました。しかしひろかへの恋が真を変えたのなら自分は諦めると言いました。真はいつも他の男子と違い、世界のうんと深いところを見つめていたと言いました。

その言葉に真は反発します。真はそんな立派な男子ではない、エロ本もたくさん持っていると言ってエロ本を唱子に見せ、女子と二人きりになれば欲情するただの男子だと言い、唱子にキスを迫り、唱子は逃げ帰りました。そんな中、母親から真に手紙が届きました。母親の人生の中で、真が唯一の非凡な存在だったのでした。そして自分の中にも何か非凡なものがあるのではないかと、さまざまな習い事を始めましたが何も上達しませんでした。多くの習い事の中で、フラメンコだけが楽しい事でした。講師との付き合いだけが、生きて行く活力だったのでした。

そして、何一つ非凡なものを持たない人間の哀しみを知ってもらいたい。真は自分の持つ非凡をもっと誇って良い。自分は真の中の非凡な部分も普通の部分も心から愛している。真の自殺をきっかけに不倫は止めた、とありました。真は母親に父親の事を問いただしました。あんな利己的な男のどこが良いのだと聞き、お父さんはそんなひどい人間ではないと母親は答えました。

回復した真が学校に戻ると、早乙女君が声をかけてきました。以前の真よりもかまえていなくて楽に見えると言いました。早乙女君と友達になりました。だれかが隣にいるというのは大変にうれしい事だったのでした。早乙女君の成績も真と似たり寄ったりで、しかも公立を目指しています。一緒に勉強する事になりました。勉強を満に馬鹿にされますが、真には考えがありました。どうせあと一年ほどで真の命が無くなるなら、私立に行くのは無駄だと言うのでした。

すると父親が渓流釣りに真を誘います。釣りをしなくても美しい景色をスケッチできると言われ、真は行くことにしました。真は楽しく絵を描き、昼に弁当を食べながら父親と話をします。仮面夫婦の生活は楽しいかと真は聞き、父親はむきになって否定しました。母親のいろんな事にチャレンジするバイタリティーに励まされると言うのでした。

実は父親は、真が小学生の頃、仕事を首になったのでした。やっと見つかった再就職先が例の悪徳商法の会社だったのでした。不正に気付きながら失業を恐れて死人のように2年間勤めていたと言いました。あの出世したと言って喜んだ日は、これでやっと正しい仕事が出来ると言って喜んだのでした。そして、悪い事はいつか終わりを告げるのだと諭しました。しかし真はもうすぐ。。。

真は父親に、今が良ければ過去の恨みは捨てるのか?と尋ね、父親は、真が生き返った日にすべての恨みは消え去ったと言いました。そして満が医学部を目指すと決めたのは、真が蘇ったあの日だったと言いました。しかしこういう話を聞くべきなのは自分ではないと真の中の魂は思い、涙を流しました。

ある日、真が美術部を覗くと、自分の絵の前にひろかがいました。ひろかは黒い絵の具を握りしめ。。。ひろかの中には実は別の。。。真は母親に意外なものをもらいました。そのものとは。。。家族の真の気持ちを目にした真はついに決意するのでした。。。天使は真にタイムリミットを設定しました。真は手掛かりを必死で探し、ついに。。。

言わばすべてはきれいごと、というのが森先生の小説だと思います。しかしながらプロットはなかなか秀逸で、トリックもまずまずでした。ファンタジーの楽しさ、というものを追求するのも時には楽しい事なのだと思わせる秀作だったと思いました。
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rodolfo1
rodolfo1 さん本が好き!1級(書評数:869 件)

こんにちは。ブクレコ難民です。今後はこちらでよろしくお願いいたします。

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